ロスト・メモリーズ

解説: 1909年、ハルピン駅で伊藤博文が暗殺されなかったらという大胆な仮説に基づいた、韓国初の近未来SFアクション大作。『友へ チング』の熱い演技で韓国中を号泣させたチャン・ドンゴンが、今回は仲村トオルと組み、70%を占める日本語の台詞をこなし、激しいアクションにも挑む。親友同士だった二人が立場上、次第に”日本人”と”朝鮮人”に引き裂かれて行く過程が痛い。日韓の歴史がリアルに反映されたドラマ。

ストーリー: 2009年、ソウルは日本の第三の都市だった。日本特殊捜査局所属の日本人、西郷(仲村トオル)と朝鮮系日本人、坂本(チャン・ドンゴン)のコンビは朝鮮独立を目指すテロリスト集団”不令鮮人”を追う。(Yahoo!ムービー)

 いま(2005年4月上旬)、日韓中の関係に微妙な問題がおきている時期になんともスゴイ タイミングで放映(WOWOW)されたので、鑑賞した。

 この映画の中では、朝鮮は日本の一部になっているわけだが、日本警察は とにかく殺しまくる。製作者の普通の感覚なのか、意図的なものなのかはわからないが、アメリカや韓国の映画にはあっても日本の映画には絶対に描かれない形だ。坂本は、西郷とは親友、そして同じ警察に身をおいているが、徐々に引き裂かれ、最後は悲劇的な別れをする。この二人の関係は最後までキレイに描いてほしかったのだが、残念ながらそうはいかない。
 二人の最後のシーンで多少気を使ったような感じはあるが、途中でしつこくオーバーラップされる
「朝鮮人が日本人に蹂躙され苦しんでいるそのとき日本人は家族で楽しく祭を楽しんでいる」
「朝鮮人の目に映るのは銃火で日本人が見るのは花火」という映像。
日本人は残酷に自分たちの保身のために殺戮を繰り返し、朝鮮人は祖国のために身を呈して戦う。
 戦時中の日本の特攻精神みたいなものが、思い切り美化されて表現されている。また、おそらく意図的なのは間違いないが、朝鮮系の親友坂本に対し、西郷が朝鮮人街を侮蔑的に表現したり、「俺はお前のことを朝鮮人だなんて思っていない」などと発言をさせたりしている。
 最後、朝鮮の教師が小学生に対して、暗殺を行った人間を「義士」と呼び、「彼のおかげで今の自分たちがある」と教えている。ごく普通に行われている反日教育が垣間見えて気分が悪くなった。

 プロットが面白かっただけに残念なのは、つくりの雑さだ。
 映画の中の設定が破綻しすぎていて苦しい部分が多い。日本語で生まれ育ったのに片言過ぎて聞き取るのに苦労する日本語だとか、タイムスリップの部分のご都合主義(あくまで伊藤博文がらみ専用のタイムトンネルなのか?)などなど。タイムスリップで歴史を変えても実際に時空を動いていない人がそれを知っていたりして。
日本語に関しては日本人が観るには無理がありすぎた。「頑張っている」で認められるのは素人だけです。プロとしてやる以上、あの日本語で善しとしてしまった監督の責任は大きい。(韓国国内で見せることだけを目的にしていたのなら、アレでも判らなかったかもしれないけれど。)

 日韓共催のワールドカップがあった年に公開された作品というのに、二度がっかりした。

 日本が過去に犯した罪について、まったく忘れて言い訳はないし、同じ過ちを犯さないように肝に銘じる必要はもちろんある。しかして、中国や韓国の人々はどうしたら日本を許す気になるのだろう?彼らの国では罪を犯した人の子や孫はずーっと攻められ続けるのだろうか?
 筆者は韓国人も中国人も知り合いがいて、皆良い人たちなのに、どうして集団になるとこうなってしまうのか。考え方や感じ方、信じるものが違ったとしても、仲良くしたい、平和を求める、という気持ちは変わらないと思うのだが。

                        1. +

ロスト・メモリーズ
監督: イ・シミョン
出演: チャン・ドンゴン仲村トオル 、ソ・ジノ 、シン・グ 、大門正明
評価: ★

超映画批評「ロスト・メモリーズ」10点(100点満点中)

その後
日本と韓国中国はじめアジア諸国との歴史を再勉強してみた。
戦後の保障や謝罪については確かにまだまだ足りないなと思った。気持ちを表すということが日本人は苦手だというのが、こんなところにも現れているように思う。圧倒的に謝罪の言葉が足りない。
日本として出している金額は相当額だが、それぞれの国に届いている金額は分散されてしまっているようだ。
終わってしまった事はどうしようもない。これからどうすればいいか考えよう。