東京小説 〜乙桜学園祭〜

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“東京でひとりぼっちの少女”をテーマに、都会で変化していく彼女たちの心情を二人の監督が描くドラマ。第1部「人魚姫と王子」を『虹の女神 Rainbow Song』の原案・脚本を手がけた桜井亜美が、第2部「立体東京 3D-TOKYO」を『ZOO』の原作者・乙一こと安達寛高がそれぞれ映像化に挑戦。東京タワーを少女たちの心を照らす“燈台”に見立て、上京したての少女の心情を小説家ならではの視点で鋭く切り取ったリアルな演出に注目。(Yahoo!映画

人魚姫と王子

心を閉ざしているため、白と黒の服しか身に着けないナジュ(つぐみ)は、その日に付き合う男をダーツで決める無為な日々を過ごしていた。ある日、ナジュは、クリーニング屋で働く高瀬(柏原収史)と出会い、彼に「あなたにはもっといろんな色が似合うと思います」と言われ……。

 心を閉ざしている主人公が、ある出会いをきっかけに変わっていく、というスタンダードなストーリーを桜井亜美がさもあらん、といったタッチで撮りおろしている。意図的ではない平易なカット割やあまり画質が良くないところなど、“学園祭”といえばそんな感じ。

 ストーリーは判りやすく一直線に進み、尺も短いのでほぼプロットのみといった印象。

 役者が一様に棒読みなのは意図的?


立体東京 3D-TOKYO
 新幹線に乗ってやってきた少女が東京に降り立つ。彼女はある目的を胸にやってきたのだ。ところが彼女はいきなりバッグを盗まれてしまい・・・

 本作は昔ながらの立体めがね(赤と青のセロハンのやつね)をかけてみる作品。筆者はどうもこのめがねが苦手で、気になって気になってストーリーも映像も十分に楽しめなかった。残念。


 上映終了後に監督二人が登場しトークショー。朴訥な感じで安達氏(乙一)は想像通り。桜井氏はケバイの一言(笑)。無口な乙一氏をぐいぐいとリードして話していた。
詳しくはこちらの方のブログ

 最後にパンフにサインをしてもらったが、丁寧に「ありがとうございます」と頭を下げる乙一氏に好感。

                        1. +

東京小説 〜乙桜学園祭〜
監督: 桜井亜美安達寛高乙一
出演: つぐみ 、柏原収史真中瞳 、高良健吾 、阿久根裕子 、小林俊
評価: ★★

問題のない私たち

中学3年の澪は仲間と一緒に同じクラスのマリアをイジメていた。これは“不快感への正当防衛であってイジメではない”という彼女なりの理屈を展開して一向に悪びれる様子はない。ところがそこへ、転校生の麻綺が出現したことで事態は一変してしまう。今度は麻綺がクラスのリーダーになり、クラスメイトたちによる澪への陰惨にして壮絶なイジメが開始されたのだった。教師たちは見て見ぬフリ。信じていた幼なじみにも裏切られ、ついには自殺を図る澪。そんな澪に唯一救いの手を差し延べたのは誰であろう、澪がイジメていたマリアだった。(Yahoo!映画
 いじめが主題の本作。現代に至って変質しているいじめの現実をリアルに描いている。もちろん映画だからその解決方法は少々楽天的。

 周囲から浮かないこと、常にターゲットが必要であり、それが誰でもかまわないこと。現代のいじめは実に残酷で、切ない。いじめられる側は誰でもかまわないということからも、「いじめられる側の責任」という言説が意味のないものであるとわかる。

 若手の所謂「アイドル」が多数出演していることでジャンル訳を誤って認識されているかもしれないが、本作は自らの体験を基にしか考えていない大人が見るべき作品なのかもしれない。

                        1. +

問題のない私たち
監督: 森岡利行
出演: 黒川芽以 、沢尻エリカ 、美波 、森絵梨佳 、小松愛 、浜田晃
評価: ★★★

スカイハイ [劇場版]

恋人との結婚式を数日後に控えている神崎刑事は最近、体の一部を切り取られるという猟奇殺人事件に悩まされていた。ある日、女性の他殺体が発見される。やはり、これまでと同様の手口で殺害されており、これで犠牲者は3人にのぼった。そして結婚式当日、4人目の犠牲者が出てしまう。その被害者とは、不幸にも神崎の婚約者・美奈だった。同じ頃、彼女は自分が殺されたことも気付かずに、“怨みの門”の前に立っていた。門番“イズコ”に3つの選択を迫られた美奈は、記憶を辿って殺された真相を掴むために現世へ戻る道を選ぶが…。(Yahoo!映画
 人気ドラマの映画化だが、ドラマと映画ではかなり毛色が違う。監督は『あずみ』『ゴジラ FINAL WARS』などの北村龍平。アクションに定評のある監督で、本作も半分アクションものだ。スカイハイの世界観は別のところにあったはずでは?という違和感はあるものの、大沢たかお天使の牙 B.T.A. )や釈由美子はアクションが上手いのでそれなりに観られた。

                        1. +

スカイハイ [劇場版]
監督: 北村龍平
出演: 釈由美子大沢たかお谷原章介 、戸田菜穂 、田口浩正岡本綾
評価: ★★

夏への扉


 SF文学の歴史に燦然と輝く名著。著者は『宇宙の戦士』などでも超有名なロバート・A・ハインライン。猫好きからも無類の好評価(笑

恋人に裏切られ、友に背かれ、発明の特許を欺しとられ、何もかも失ったあげく冷凍睡眠で21世紀の未来に送り込まれた発明家ダニイは、真相をつきとめるためタイムマシンで再び過去にもどったが……。(bk1

 本作が発表されたのは1957年。実に50年前(!)だが、今読んでも十分に楽しめる作品だ。

 もちろん細かい描写のそこかしこに時代を感じさせるのだが、それをおいても楽しめるストーリーテリングがいい。主人公が生きる時代は1970年。事情があって冷凍催眠で30年後の未来へ行くわけだが、そこは2000年である。まだ20世紀だ。

 さて肝心のストーリー。裏切りにあって何もかもを失ってしまう主人公であるが、冷凍催眠と、未来で開発された1/2の確率で過去か未来へ飛ぶタイムマシンを使って奮闘する。

 なんだかんだといいながらも前向きな主人公と、あくまで自分の気持ちの赴くままの猫が魅力的。

                        1. +

夏への扉
著者: ロバート・A・ハインライン
評価: ★★★★

バベル

 モロッコ、メキシコ、アメリカ、日本で、コミュニケーションの欠如が起こす悲劇とドラマ。それぞれの事件には実はつながりがあった・・・。
 ブラッド・ピット役所広司が演じるキャラクターはそれぞれの国で異なる事件に関わり、お互いに面識も認識もない。

モロッコを旅行中のアメリカ人夫婦のリチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)が、突然何者かによって銃撃を受け、妻が負傷するという事件が起こる。同じころ、東京に住む聴覚に障害を持った女子高生のチエコ(菊地凛子)は、満たされない日々にいら立ちを感じながら、孤独な日々を過ごしていた……。 (Yahoo!映画

 物語の主軸はモロッコで起きた事件と、それに巻き込まれた夫妻の家族である。さらっと観ていると日本のパートは必要だったのか?という感想を持ちそうだ。かくいう筆者も印象としてはかなりそれに近い物に傾いていた。ではなぜ日本のパートが必要だったのか?

 この物語は、タイトルに掲げられているとおり、旧約聖書の中でその傲慢さから神の怒りを買った「人」の物語である。怒った神はどうしたか。人の言葉を乱して互いの言葉を通じなくさせ、散りじりにさせたのである。
 改めて言うまでもなく、これは互いのコミュニケーションを付かなくさせることのたとえであり、言葉が通じても心が通じない状態は「神の怒り」のなかにあるといえるだろう。

 事の発端は、決して仲がいいとは言えないモロッコの兄弟が互いをけん制するために始めた腕比べである。被害にあうアメリカ人夫婦は互いのことを思いやれない状態で険悪だ。同じく意思疎通が「心の問題」で不全になっている日本の親子も登場してくるのだが、前半は特に「胸糞悪い」と表現したい描写が続き、辛い。 さらにアメリカ人夫婦のもとで働くメキシコ人メイドの話が絡んでくる。

 結局時系列を多少いじっているだけで、事件相互に何か特別な絡みがあるわけではなく、それぞれがコミュニケーションの欠如、些細な行き違いが大事に発展してしまうということだ。そしてその結末は悲劇と、希望を持たせたものが半々。
 エンディングで兄との楽しい思い出を浮かべる弟が痛々しい。そしてある人物が言う台詞。

「私は悪い人間じゃない。愚かなことをしただけ・・・」

印象に残るシーンは他にも。

 モロッコの名も無き村に赴くことになった観光客が自らの偏見から村人に恐怖を抱き、瀕死の重傷者を置き去りに逃げ出す一方突然やってきたけが人を手厚く看病し、案内したガイドは粉骨砕身のケアをしたにもかかわらず夫の差し出す札束を丁寧に押し戻す・・・。
自分の頭の中の考えにしか意識が向かない人と相手の置かれた状況を見つめて相手のことを考えて行動する人々・・・夫の思いが通じたのは言葉の通じない初対面の人々だった。

 メキシコでは子供たちは言葉が通じなくてもすぐに仲良くなり楽しく遊ぶ一方、文化の違いから祝砲におびえ、鶏を絞める姿に驚愕する。

 さて、日本のパートであるが聾唖(ろうあ)の少女がする行動が日本人の感覚にかけ離れすぎていて、不快感を持つ人が少なくないようだ。確かに、まったく無いとは言わなくても、やっていることは所謂「アメリカ的」である。一応の説明としては肉体的ハンデから来るコミュニケーションの難しさに対する焦りが引き起こした行動ということになるだろうか。

 もう一点、エピソードが「コミュニケーション」というつながりでくくることが出来たとしてもそのほかのエピソードのようなつながりがなく、浮いている。ここは確かに気になる。筆者の理解はこうだ。

・世界に散り散りになった人。これを描くには「世界」が必要で、「アジア」を必要とした。
・モロッコ、メキシコが画的にも褪せた色調で所謂先進国の中の出来事を必要とした。
そしてどうしても入れたかったのが、現代においてバベルの塔を彷彿とさせる高層ビル。
日本の親子が高層マンションの高層で凄く豪華な暮らしをしているのは
「驕る人類」、「バベルの塔」、豊かな中にあっても「神の怒り」は免れていないことの象徴なのではないか。

 内容は、後に「考える」ことを強烈に突きつけられるもので、心の健康なときに観ることをオススメする。弱った状態で観るとへこむこと請け合いだ。

 登場する少女がダコタファニングに似ているなぁと思っていたら、妹だった。

                        1. +

バベル
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演: ブラッド・ピットケイト・ブランシェットガエル・ガルシア・ベルナル役所広司菊地凛子二階堂智
評価: ★★★

同い年の家庭教師

 訳あって留年した不良高校生と、家庭教師をすることになった女子大生のドタバタラブコメディ。

父親の失職により、チキン料理の娘となったスワン(キム・ハヌル)は、大学2年生で学費のため家庭教師のアルバイトをしていた。しかし鏡でスカートの中をのぞこうとした生徒ともめ、7日目で首になってしまう。そんなスワンに家庭教師をやめるなら学費はないという母親は、新たに生徒を彼女に紹介する。それがジフン(クォン・サンウ)だった。財閥の息子で、喧嘩も強く、高校を2回も落第し同い年の生徒ジフン。初日からタメ語で口をきき、タバコをすいながら授業を受けるジフンにスワンは切れるものの学費のためやめることもできなかった。そんなスワンにジフンはただ家に来て、2時間たったら帰ればいいという。最初はそれに同意したスワンだったが・ ・・。(k-plaza

 べたべたな韓国ラブコメ。韓流好きでなければ楽しめないかも。

 ラブストーリーの王道、初めはいがみ合っていたが次第に・・・をしっかり押さえているものの、ハプニングや周囲の登場人物が支離滅裂な印象を受ける。というのも、それぞれがばらばらで、ひとつのストーリーの要素としてまとまっていないからだ。

 そろそろ終わるかなと思ったらまだ前半だった・・・。

 クライマックスもそれまでのストーリーがあまり関係ないようなかんじで、ここで始めて登場する人物とのかかわり。クイズ番組で最後の問題がそれまでの百倍の点数だったみたいな。

                        1. +

同い年の家庭教師
監督: キム・ギョンヒョン
出演: クォン・サンウ 、キム・ハヌル 、コン・ユ 、キム・ジウ
評価: ★

LIMIT OF LOVE 海猿

 『海猿』の続編。設定としては 映画→ドラマ→映画 という展開になっているが、映画→映画でも楽しめる作り。監督は『逆境ナイン』『恋人はスナイパー』の羽住英一郎

潜水士として成長した仙崎(伊藤英明)は、鹿児島・第十管区で吉岡(佐藤隆太)たちと任務に就いていたが、ある日、鹿児島沖3キロで乗員・乗客620名を乗せた大型フェリー船座礁の一報を受ける。船内に積まれた車に引火すれば未曾有の大惨事は免れないが、その船には、仙崎の恋人である環菜(加藤あい)も偶然乗り合わせていた。(Yahoo!映画

 賛否両論のある本作。最近テレビ放映が早くもあった。
大型フェリーの座礁事故が舞台で、600人の乗客がいて、と大変大きな舞台なのだが、現場が対策本部のビルの窓から見えていて、港の中に船があってというのが、映画の場面としては筆者としてはなんとなくしょぼく感じてしまった。これが街中のビルだったりすると一気に緊迫してくるのに自分でも不思議だ。

 ストーリー展開はピンチに次ぐピンチなのだが、要所要所ではずしてしまってついついツッコミを入れたくなってしまう・・・。散々いろいろなところで言われているが、携帯電話の場面があまりにのんびりしているため、「早くしろよ」といいたくなる。海外ではここで失笑が出たというが、さもありなん。

 佐藤隆太が『ローレライ』に続いて挟まっちゃうけど、今回は・・・

                        1. +

LIMIT OF LOVE 海猿
監督: 羽住英一郎
出演: 伊藤英明 、加藤あい佐藤隆太 、大塚寧々 、吹越満浅見れいな
評価: ★★★

■■海猿