天使の牙 B.T.A.

 大沢在昌 原作のハードボイルド作品。設定が突飛ならストーリー展開も・・・

 麻薬組織クラインのボス、君国の愛人はつみが警察に助けを求める電話をかけてきた。優秀な女刑事・明日香が警護につき、はつみをパーティ会場から救出する手はずが整う。しかし、2人は何者かに銃撃されてしまう。はつみが脳だけに致命的な損傷を受けた一方、明日香のほうは脳だけが無事だった。その結果、無傷だった明日香の脳ははつみの身体に移植されることとなった。こうして、はつみの肉体を借りて“アスカ”として蘇った明日香。彼女ははつみとしてクラインへの潜入捜査を開始する。そんなアスカの前に明日香の恋人だった男・古芳が姿を現わすが…。(Yahoo!映画

 なんともハチャメチャな作品。設定を受け入れられるか否かはその後のストーリー次第。本作は設定を生かしきれているとは言いがたい。本人の葛藤も浅ければ周囲の人間もあっさりとしたもの。それなら他の部分が練られているかといえば、女を溺愛して身を滅ぼすマフィアも間抜け、黒幕も間抜け・・・

 ラストの展開に至っては一切の伏線なしの唐突なオチ。

                        1. +

天使の牙 B.T.A.
監督: 西村了
出演: 大沢たかお佐田真由美萩原健一佐野史郎黒谷友香豊原功補永井大 、要潤 、小木茂光田中要次嶋田久作 、遠山俊也 、日向崇 、西村雅彦
評価: ★

ゴール!2

無名のサッカー選手のサクセスストーリー3部作の第2部。

ニューカッスル・ユナイテッドでの実績を確かなものにし、婚約者ロズ(アンナ・フリエル)との結婚準備も順調なサンティ(クノ・ベッカー)。そんな彼のもとに、元チームメイトのガバン(アレッサンドロ・ニヴォラ)も所属するレアル・マドリードへの移籍話が舞い込む。悩んだ末、サンティはスペインへ向かうが……。 (Yahoo!映画

イングランドプレミアリーグで活躍し、成功した主人公サンティは、リーガエスパニョーラレアル・マドリーからオファーを受ける。前作に続いてジダンベッカムらスター選手が登場。活躍の場は、チャンピオンズ・リーグ。

実際のチャンピオンズリーグの映像を織り交ぜながら主人公が活躍、サクセスしていくのだが、何より印象に残っているのがベッカムの活躍(笑 ほかの誰よりもいいところをかっさらっていく活躍ぶり。よもや公開時点で移籍が決まっているとは思わなかったのだろうなぁ。
相手チームとしてロナウジーニョら実在選手の映像もふんだんに使われているのがFIFA公認クオリティ。

 ストーリーは前作よりも少し複雑に。誘惑が増え主人公サンティお調子に乗ったりするのだが、それも可愛いもので、健全さは相変わらず。生き別れの母親との再会や親友とのレギュラー争いといったともすればそれひとつで2時間引っ張れるようなアクシデントが出てきてはさっくり解決していくのは詰め込みすぎの印象がのこった。

 3部作の2本目ということで、これだけのエピソードを盛り込んでしまった結果、1作目を見ていない人をほぼ対象外としたつくりになっている。そもそもの主人公が、初見の観客には「誰?」という感じだろうと思う。

 本作の終わり方も、もっとも大きな恋人とのすれ違いをそのままに、試合の終わったところでぶっつりきる形。

                        1. +

GOAL! ゴール!
監督: ジャウム・コレット=セラ
出演: クノ・ベッカー 、スティーヴン・ディレイン 、アンナ・フリエル 、アレッサンドロ・ニヴォラ 、マーセル・ユーレス 、ショーン・パートウィー 、トニー・プラナ 、ミリアム・コロン 、デヴィッド・ベッカムラウール・ゴンサレスジネディーヌ・ジダンアラン・シアラー 、スティーヴン・ジェラード
評価: ★★★

GOAL! ゴール!


FIFA国際サッカー連盟)公認のサッカー映画。映画史上初だそうで、本作は3部作の第1弾にあたる。

プロを夢見てL.A.の地元サッカーチームで活躍するラテン系青年サンティアゴ(クノ・ベッカー)は、ある日スカウトに才能を見出され、ニューカッスル・ユナイテッドの入団試験を受けるチャンスを得る。父の反対を押し切り単身渡英し、逆境に苦しみつつも入団を果たした彼は、今まで以上に熾烈(しれつ)な競争と困難に立ち向かっていく。 (Yahoo!映画

 メインの舞台になるのはイングランドプレミアリーグのニューカッスル。無名の新人選手が成長し、成功していく姿を彼の周りの人々との関係とともに描いている。
 主演が、少なくとも日本ではまったく無名の俳優であるが、「FIFA公認映画」とかベッカムやラウール、ジダンなど有名選手が登場することで注目度を上げている。

ストーリーは「健全」の一言。ちょっとした誘惑はあるものの主人公はそんなものに揺るがないし、周囲の人々も多少の紆余曲折はあってもいい人ばかりだ。さすがFIFA公認。子供から大人までオススメできるというつくりになっている。
 ただ、その分ストーリーの厚みというか重みが足りないという感は否めない。アクシデントに対してあまりにも軽々と乗り越えているように見えてしまうのだ。
 メキシコからアメリカへの移民であったり、英国に行ってからの苦労なども描かれているのだが、もうひとつ大変さが伝わってこないのが残念。

サッカーシーンは最近のCG技術を駆使してかなりそれっぽい出来。昔の人が見たら驚くだろうね。

                        1. +

GOAL! ゴール!
監督: ダニー・キャノン
出演: クノ・ベッカー 、スティーヴン・ディレイン 、アンナ・フリエル 、アレッサンドロ・ニヴォラ 、マーセル・ユーレス 、ショーン・パートウィー 、トニー・プラナ 、ミリアム・コロン 、デヴィッド・ベッカムラウール・ゴンサレスジネディーヌ・ジダンアラン・シアラー 、スティーヴン・ジェラード
評価: ★★★

Presents うに煎餅

文房具メーカーに入社して1 年になる松下羽月(戸田恵梨香)は、憧れの仕事とはかけ離れた雑務だけの毎日にうんざりしていた。留年を重ね、いまだに学生をしている大学時代からの彼・高野悟(平岡祐太)との格安デートでも、仕事の愚痴ばかりをこぼす葉月。その愚痴を聞き飽きた悟との間に、溝ができ始め……。 (Yahoo!映画

角田光代の短編集「Presents」の連続映画化第2弾。主演は戸田恵梨香平岡祐太

 先に就職した彼女と、留年した大学生の彼のバレンタインデーからホワイトデーまでを描いたラブストーリー。

 鑑賞しての印象は「カラフル」。羽月のファッションを筆頭に、映像の中には色があふれている。ストーリーとはあまり関係なく。とにかくカラフルである。

 ストーリーは・・・かなりベタな題材、展開ではあるがさらりとデートで観るにはいいかも。(本作はレイトショーを意識して制作され、尺も短くなっている)“幸せ”とは何か?という部分をストレートに描いており、女の子が誰しも葛藤するであろう命題、「文句の無い相手」と「ダメだけど気の許せる相手」
本作ではもちろん後者を選ぶわけだが、映画でありファンタジーであるからしょうがない。現実にどのような結末を迎えるか、というとダメな奴はダメだし、それなりの人も長く一緒にいれば気が許せるようになったりするのだけれど、ファンタジーに徹する本作は、だからこそデートムービーなのだ。

                        1. +

Presents うに煎餅
監督: 石井貴
出演: 戸田恵梨香平岡祐太黄川田将也秋田真琴掟ポルシェ
評価: ★★★

アンフェア the movie

何者かが仕掛けた爆弾で自宅の駐車場に止めてあった雪平(篠原涼子)の車が爆発炎上、学校に向かおうとしていた娘の美央が巻き込まれ爆風で大怪我を負ってしまう。雪平は刑事をしているために払う犠牲が娘の美央に及ぶことを心配し、刑事を辞めようかとさえ思い始める。しかし、数時間後、警察病院がテロリストに占拠されてしまい……。 (Yahoo!映画

 ドラマ→スペシャルドラマ→映画。全ての謎が明らかに、という煽りだが、果たして・・・。

 人気TVドラマの劇場版でシリーズ完結編とされていたはずなのだが、明らかに続編を意識した作りになっている。先週の時点では劇場の入りはそこそこだったが果たして。

 本作ではスペシャルドラマで登場した江口洋介の出番が多い。そして映画では椎名桔平成宮寛貴加藤ローサらが登場。加藤ローサの使い方をみても少なくともドラマは作られるだろう。銃声の後の場面であそこにたっていたのは女性だよね、多分。

 ドラマから連なる本作の特徴であるさっきまでの見方が裏切ることの連続は本作でも同様。パンフレットの対談などではリアリティを謳っているものの、破綻してきた感は否めない。限られた登場人物の中で物語を進行するため、後付の理由のための直近の整合性だけをあわせている感じに陥ってしまった。

 ドラマが3ヶ月の放送であったにもかかわらず一気に見せきった形で成功していただけに、もっと練った脚本にしてほしかった。

                        1. +

アンフェア the movie
監督: 小林義則
出演: 篠原涼子椎名桔平成宮寛貴阿部サダヲ濱田マリ加藤ローサ 、向井地美音 、加藤雅也大杉漣寺島進 、江口洋介
評価: ★★

檸檬のころ

豊島ミホ原作の青春映画。現役よりは「あの頃」を思い出せる大人が見ると感慨深い気分を呼び起こしてくれる良作。主演の二人の榮倉奈々谷村美月が素敵で、特に谷村美月が良い。

吹奏楽部の指揮者で成績優秀な加代子(榮倉奈々)は、中学時代から思いを寄せられている野球部の西(石田法嗣)の気持ちにこたえられずにいた。一方、音楽ライターを目指す恵(谷村美月)は、軽音楽部の辻本(林直次郎)と出会い、音楽談義に花が咲く。高校最後の文化祭を前に、恵は辻本が初めて作った曲の作詞を頼まれる。(Yahoo!映画

 田舎に住む高校生の、誰もが経験する「青春」な出来事を 変に飾ることなく、だからこその輝きを花って描いている。自身の若かりし頃に思いを馳せれば、なぜあの時あんなことを言ったりやったりしたんだろうと苦笑を伴って蘇ることが実に多い。しかし、そんな格好悪さやわかりやすいダサさこそが「あの頃」が宝となって胸に宿る理由なのではないか。
監督のインタビューを読んでもそのあたりは意識しているらしく、一観客としての筆者としては実に「わが意を得たり」といった気分で、満足感が大きい。

 高校生の頃は、まだ学校の中の小さな社会がほとんど全てで、それぞれの個性とは別なところで皆がフラットな立ち位置におかれている。長身の榮倉奈々も小柄な谷村美月も同じ制服を着て、成績優秀な彼女にも、野球一筋の彼氏にも同じく受験がやってくる。振られた彼女とおなじ電車に乗らなくてはいけないし、クラス全員が同じ教師に進路相談するわけだ。
 その中でそれぞれに生きる彼らのユニークさは、ばらばらであると同時にさまざまな共感を感じさせてくれる。皆が通る悩みや切ない思い、それから初恋についつい緩む表情・・・。

 本作でもっとも輝いていたのは文句なしに谷村美月だと思う。いまのところこの最新作が代表作と言っていいのではないか。くるくると変わる表情に見ているほうも一喜一憂させられた。
 榮倉奈々は、いつもの元気溌剌キャラではなく、成績優秀な優等生役。演技はかなり苦労している印象。あまり田舎に似つかわしい容姿ではないけれど、そこにいる、という存在感は持っているので、これからたくさん経験を積んでいってほしいと偉そうに思ったりする。
 柄本佑石田法嗣は過剰でもなく、足りなくもなく、作品にマッチした上手さを出していたと思う。彼らが彼女たちをぐっと引き立たせていたのではないか。
 今回が映画初出演となる「平川地一丁目」の林直次郎は・・・、演技と呼べるレベルではないというのが率直な評価。歌番組でメディアに登場しているときからしてあの感じなので、しょうがないカナとも思うが、本人は役者にも興味があるとのことなので猛烈に修行してほしい。声変わりしてから、歌のほうも岐路に立たされている感があるので、あのルックスを生かしてなんとか頑張れ。

                        1. +

檸檬のころ
監督: 岩田ユキ
出演: 榮倉奈々谷村美月柄本佑石田法嗣 、林直次郎 、浜崎貴司石井正則織本順吉大地康雄
評価: ★★★★

バッテリー

野球にすべてを賭け、自分のピッチャーとしての才能に絶対の自信を持っている原田巧(林遣都)は、中学入学を控えた春休みに岡山県境の地方都市に引越す。引越し早々、巧はキャッチャーの永倉豪(山田健太)と出会い、バッテリーを組むことを熱望されるが、二人が入部した新田東中学の野球部は、監督に徹底的に管理されていた。(Yahoo!映画

 原作は累計800万部を超える売上げを記録しているそうだ。恥ずかしながら筆者は未読。中心となる少年たちの新鮮な魅力を、脇を固めるベテラン俳優陣がしっかりと支えて魅力的な作品に仕上げている。

 主人公の巧は幼い頃から才能に目覚め、彼の投げるボールはキャッチすることが難しいほど。そんな彼は病弱な弟にかかりきりの両親とも距離があり、孤独を抱えて生きてきた。せっかくめぐり合った彼の球を捕れる相棒・豪にもそっけない態度しかとれない。それでも天真爛漫に懐に入り込んでくる豪と、そのチームメイトと心を通わせて行く。

 中学に入ると、その傲慢な態度から、上級生の反感を買い、嫌がらせを受けてしまう。

 それでも豪たちと支えあいながら何とかやってきた巧であったが、自らの成長に遅れをとった豪に対する戸惑いと苛立ちから二人の関係に微妙な影が落ちる・・・。

 一人相撲をとってしまい一度は孤独に戻りかける巧であったが、仲間のサポートのおかげで再びチームは結束、動き出す。

 野球を通して描かれる少年時代の友情と成長の物語。全ての世代にさまざまな共感を抱かせる、普遍的で大切なものが温かな視線で描かれており、非常に好感が持てた。

 主人公の巧は優れた才能に恵まれたピッチャーであるが、彼のボールを取れるキャッチャーがいなければその力を発揮することは出来ない。『バッテリー』が揃わなければ意味がなく、それぞれが実力を持っていても互いを信頼していなければ機能しない。そして、その周りを囲む仲間がいなければ野球は出来ないのだ。

 筆者の世代になると彼らくらいの年のころを思い出すとともに、今を生きていくうえでなんとなく忘れがちな気持ちを思い起こさせてくれる。劇場に来ていた若い世代の人たちは非常に感じ入った様子で満足げに劇場を後にしていた。願わくば彼ら、彼女らが友を思いやり、自分の夢に邁進してくれますように。


 劇場には中学生くらいの若い女の子の割合が高かった。それも主人公を演じた林遣都 を一目見れば納得がいくというもの。かなりの美形で、表情も魅力的であった。いわゆるツンデレな感じは男女問わず魅力的であるらしい。
 また、弟役もそうとうかわいらしく、エンディング近くのアップの場面で女の子が思わず「かわいい!」と叫んでいたのが印象的。

                        1. +

バッテリー
監督: 滝田洋二郎
出演: 林遣都 、山田健太 、鎗田晟裕 、蓮佛美沙子萩原聖人上原美佐
評価: ★★★★