ハサミ男

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。(Amazon.co.jp)

 やられた。まんまと。本を手に取ったときから。

 筆者はミステリに関してはさほど造詣が深くないので、作者の張った伏線に気づくことも無く、クライマックスまでまんまとだまされつづけた。おかげでクライマックス部分に差し掛かったところでは、まるで迷子になったかのように何度も読み直したりした。それまで「読みやすい」と思っていた文章が急に判らなくなった時の自分の中の混乱が気持ちよく思い出される。

 さんざん登場しているのに登場していない重要な人物が物語を動かしてく様が、筆者にとっては実に爽快であった。(このストーリーに対して「爽快」というのも不謹慎かもしれないが)

 ハサミ男の独白と、読後に明らかになる「彼」の実際とを考え合わせた時、若干違和感を感じるところもあるにはある。しかし、筆者にとっては展開に驚いた衝撃のほうが強く、感想を求められたら「面白かった」としかいえない。

 読後なんとなく「こんな話はどうか」「こんな展開はどうか」とミステリのあらすじやトリックを考えている自分に気づいて笑ってしまった。

 「ハサミ男」に張られた伏線については、探偵小説を読む3 殊能将之『ハサミ男』の伏線について『ハサミ男』の**に迫る(ネタバレ注意)に詳しい。ぜひ、本書読後に読まれることをお勧めする。

 とにかく筆者としてはミステリにはまりつつある自分を感じているので、いろいろ読んでみよう!と心に決めた次第である。(あまりレビューになっていないなぁ)

                        1. +

ハサミ男
著者: 殊能 将之
評価: ★★★★