ソウルで逢えたら

借金返済のために韓国に渡った明恵はひょんな事から芸能界にデビューすることになる。しかしその裏には意外な真実が・・・・

 世の中の話題を取り入れて作品を紡ぐ松岡圭祐氏の最新作。今回は韓流ブーム。主人公は33歳子持ちの女性、舞台は韓国である。ページ数も少なく、相変わらずリーダビリティの良い松岡作品なので、1時間もあれば読めてしまう感じである。ストーリーの主軸は主人公の成長物語であるが、本作では韓国の文化の紹介をちりばめながら韓国ドラマ好きの人はもちろん、韓国の人々の反日感情についてもさらりと触れている。

 読後の印象は、今回もさわやかだが、思わせぶりな登場人物がぜんぜん話に絡んでこなかったり、大前提となる設定(33歳の子持ちの女性が「アイドル」として大人気になる)が、「お話」なりの説得力をもちえていないという感じがした。千里眼シリーズなども十分荒唐無稽だが、あちらはそれなりの世界としてつじつまが合っているように思うのだが、本作はどうもしっくり来なかった。
 とはいえ、われわれの「自分自身」との関わり方、これからの日韓の関わり方、考えさせられるテーマを筆者の中に残してくれた。

                        1. +

ソウルで逢えたら
著者: 松岡 圭祐
評価: ★★★