いま、会いにゆきます

秋穂巧(中村獅童)は妻の澪(竹内結子)に先立たれ、1人息子の佑司(武井証)とつつましく暮らしていた。ある雨の日、妻にそっくりの女性が現れるが、彼女は記憶喪失だという。(Yahoo!ムービーより引用)

亡くなった妻は、彼女が絵本に残したとおり秋穂と佑司の元に返ってきた。秋穂は彼女が戻る前からそれはありえないことであると考え、彼女が帰ってきてからも、梅雨が明ければまた彼女を失うのだということを知っている。根拠や証拠云々を抜きに知っている。

自分たちの記憶を持たない妻に対し、はじめてあった頃のように恋をし、ずっと暮らしてきた家族として慈しむ。そんな二人の気持ちに触れ、ただ信じることができた澪も心を開き、改めて家族となっていく3人の姿はとても優しく、暖かい。
家族に「いってらっしゃい」と送り出されるということを今まで特に気に留めたことは無かったのだけれど、とても尊く大切なことなのだと感じた。

雨。普段我々は雨を憂鬱で嫌なものだと思いがちだけれど、それは自分の気の持ちよう、感じ方次第なのだとおもう。この作品では雨が降っている間は大事な人がそばにいてくれる。佑司は懸命に逆さの照る照る坊主を作り、秋穂は長引く梅雨を伝える天気予報に喜ぶのだ。受け取る側の感じ方次第で世界が変わる。このことはいろいろな人がいろいろな形で訴えてきたことだけれど、ついつい忘れがちになってしまうことだと思う。人の気持ちもまた然り。自分の受け取り方次第で、嫌なことは減るし、いいことは増える。自分の気持ちが仮令上手く伝わらなくても、それは受け取る相手次第なのであり、やれることを精一杯やったのなら気に病むことなど無いのかもしれない。

この映画の中には、悪い奴は出てこない。(陸上大会で邪魔した奴はいれません)基本的には秋穂、澪、佑司の3人の閉じた世界で物語りは回るのだが、外の世界とのかかわりである、秋穂の会社(事務所)の同僚、佑司の学校の先生・同級生、みな暖かく、優しい。秋穂や佑司の視点を通し、気持ちを反映した結果の現れなのではないか。

心が渇き気味になってしまった人には、オススメです。

                        1. +

いま、会いにゆきます
監督: 土井裕泰
原作: 市川拓司
出演: 竹内結子中村獅童武井証美山加恋 、浅利陽介
評価: ★★★★