檸檬のころ

豊島ミホ原作の青春映画。現役よりは「あの頃」を思い出せる大人が見ると感慨深い気分を呼び起こしてくれる良作。主演の二人の榮倉奈々谷村美月が素敵で、特に谷村美月が良い。

吹奏楽部の指揮者で成績優秀な加代子(榮倉奈々)は、中学時代から思いを寄せられている野球部の西(石田法嗣)の気持ちにこたえられずにいた。一方、音楽ライターを目指す恵(谷村美月)は、軽音楽部の辻本(林直次郎)と出会い、音楽談義に花が咲く。高校最後の文化祭を前に、恵は辻本が初めて作った曲の作詞を頼まれる。(Yahoo!映画

 田舎に住む高校生の、誰もが経験する「青春」な出来事を 変に飾ることなく、だからこその輝きを花って描いている。自身の若かりし頃に思いを馳せれば、なぜあの時あんなことを言ったりやったりしたんだろうと苦笑を伴って蘇ることが実に多い。しかし、そんな格好悪さやわかりやすいダサさこそが「あの頃」が宝となって胸に宿る理由なのではないか。
監督のインタビューを読んでもそのあたりは意識しているらしく、一観客としての筆者としては実に「わが意を得たり」といった気分で、満足感が大きい。

 高校生の頃は、まだ学校の中の小さな社会がほとんど全てで、それぞれの個性とは別なところで皆がフラットな立ち位置におかれている。長身の榮倉奈々も小柄な谷村美月も同じ制服を着て、成績優秀な彼女にも、野球一筋の彼氏にも同じく受験がやってくる。振られた彼女とおなじ電車に乗らなくてはいけないし、クラス全員が同じ教師に進路相談するわけだ。
 その中でそれぞれに生きる彼らのユニークさは、ばらばらであると同時にさまざまな共感を感じさせてくれる。皆が通る悩みや切ない思い、それから初恋についつい緩む表情・・・。

 本作でもっとも輝いていたのは文句なしに谷村美月だと思う。いまのところこの最新作が代表作と言っていいのではないか。くるくると変わる表情に見ているほうも一喜一憂させられた。
 榮倉奈々は、いつもの元気溌剌キャラではなく、成績優秀な優等生役。演技はかなり苦労している印象。あまり田舎に似つかわしい容姿ではないけれど、そこにいる、という存在感は持っているので、これからたくさん経験を積んでいってほしいと偉そうに思ったりする。
 柄本佑石田法嗣は過剰でもなく、足りなくもなく、作品にマッチした上手さを出していたと思う。彼らが彼女たちをぐっと引き立たせていたのではないか。
 今回が映画初出演となる「平川地一丁目」の林直次郎は・・・、演技と呼べるレベルではないというのが率直な評価。歌番組でメディアに登場しているときからしてあの感じなので、しょうがないカナとも思うが、本人は役者にも興味があるとのことなので猛烈に修行してほしい。声変わりしてから、歌のほうも岐路に立たされている感があるので、あのルックスを生かしてなんとか頑張れ。

                        1. +

檸檬のころ
監督: 岩田ユキ
出演: 榮倉奈々谷村美月柄本佑石田法嗣 、林直次郎 、浜崎貴司石井正則織本順吉大地康雄
評価: ★★★★