マリー・アントワネット

14歳のオーストリア皇女マリー・アントワネットキルステン・ダンスト)は、母マリア・テレジア(マリアンヌ・フェイスフル)の命令でフランス王太子(ジェイソン・シュワルツマン)に嫁ぐことになる。期待を胸に馬車に乗り込んだ彼女だったが、国境では衣装から下着までをフランス製のものに変えさせられ、愛犬まで取り上げられてしまう。 (Yahoo!映画

 主役は「誰でも知っている」といっても過言ではない有名な王妃マリー・アントワネット。しかしながら本作で描かれるマリー・アントワネットの姿は、すくなくとも特別西洋の歴史に詳しくない私の認識とはかなり異なるものであった。

 監督のソフィアコッポラがパンフ上で語るところでは、曰く「徹底してマリー・アントワネットの目線で撮ろうと決めていた。」なるほど、それならあくまで周囲の環境の所為で浪費や不倫に走ったなどといった描かれ方にも納得がいく・・・などということは無い。本作でどうにも物足りなかったのは、まさにこの主人公の目線、主人公の心情がスクリーンを通して伝わってこなかったことだ。

 衣装もセットも豪華絢爛、当時の王宮の暮らしぶりなどはこれでもかと描かれているのだが、どうにも当人の心の動きが伝わらない。ただひたすらに歴史をそのまま(マリー・アントワネット贔屓目に)追っているだけという印象だった。
 結婚当初はまったく心の通わなかった夫との関係が、ラストでは運命を共にすると口にするようになるまでになるなど“歴史に合わせて”脚本は書かれているが、本当にそう思うようになったのか、環境がそう言わせ、行動させたのかといったところも観客に放り投げてしまった感は否めない。「この作品中のマリー・アントワネットならこうだろう」と、推測するだけのマリー・アントワネット像が無いのである。

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マリー・アントワネット
監督: ソフィア・コッポラ
出演: キルステン・ダンストジェイソン・シュワルツマン
評価: ★★