いちばんきれいな水

小学6年生の夏美(菅野莉央)には、難病で11年間も眠り続けている姉の愛(加藤ローサ)がいる。夏休みのある日、両親が出かけて2人っきりになった晩、姉の愛が突然目を覚ます。年齢は19歳だが、心は8歳のままの姉。無邪気に振る舞う姉に、無理矢理外へ連れ出された夏美は、姉と一緒にかけがえのない時間を過ごすのだが……。(Yahoo!映画)

 少女のひと夏の不思議な経験と成長を描いたファンタジックな物語。主演は加藤ローサ演じる愛というクレジットとなっているが、実際のところは愛と夏美の二人の姉妹である。夏美が主役、といってしまいたい人もたくさんいると思うのだが、これは二人であるところに意味がある、そんな気がする。

 11年眠り続けていた人がいきなり歩けるなど、細かい突っ込みどころはもちろんあるのだが、本作の本筋とは違うので特に着目する必要はないだろう。本作は夏美の心の変化、愛が何故目覚めたのか(目覚めた原因でなく何のために?というところが大切)、そして姉妹の心のつながりが丁寧に描かれている。

 ミュージックビデオを数多く手がけた監督が、映像美だけの自己愛だけに陥らずに物語を大切に扱って作っていることが感じられる。加藤ローサの可憐さはもとより、叔母役のカヒミ・カリィの持つユニークな空気感もしっかりとフィルムに収めており、このあたりの素材を生かす手腕には感心した。(何か偉そうになってしまった)

 物語の結末はあっさりとしたもので、あの出来事は本当にあったのか?夢だったのか?という感触を残しているが、夏美は確実に成長して、これまで以上に姉とともに生きているということが伝わってきて、気持ちの良い後味。成長したことで子供らしさを取り戻す、自分を取り戻す、そういったことはきっと大人にも起こりうる変化ではないだろうか。

 筆者はオープンしたてのユナイテッドシネマ豊洲で鑑賞したのだが、ここでの上映に限りスピンオフショートムービー「夏美の夏」の上映があった。
 物語は、夏美の同級生の崇が、豊洲に引っ越すことになり、子供たちが豊洲の町を見に来る、といったところから始まる。子供の頃のちょっと切ない思い出を回想するような、そんな気分になる良作であった。(★★★)

                        1. +

いちばんきれいな水
監督: ウスイヒロシ
出演: 加藤ローサ菅野莉央カヒミ・カリィ南果歩田中哲司松田洋治
評価: ★★★

ユナイテッドシネマ豊洲はとにかく席が広くて良い。跳ね上げ式ではなくすえつけてある座席で、足が伸ばせる。肘掛は両側が使える。背もたれが高く(=1段ごとの段差、客席の傾斜が大きい)、観やすい。
★★★★