暗いところで待ち合わせ

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった―。(Amazon)

 何も知らずに読み始めた筆者は、おどろおどろしい、不気味な話なのかと思っていたのだが・・・いい意味で予想外な、良作に出会えたと思う。

 登場人物の中でメインとなる二人はそれぞれの事情で社会に上手く馴染めず、しかしそんな状況もなんとなく受け入れてしまって日々を生きてきた。そんな二人が図らずも心を通わせ、止まっていた時間を動かそうという気になる。そこには互いを思いやる温かさがベースとしてある。

 ストーリーはミステリーの大きな流れと彼らの心の交流、変化という大きな流れが上手く絡み合っている。ミステリー部分にしても最初からメインのなぞが提示されるというわけではなく、この物語はどこに向かっていくのか?という「?」から徐々になぞの全貌が明かされるというかたちで、それほど長くない作品中に十分に楽しめる展開が盛り込まれている。ただの導入とも思われそうな部分にも、実はしっかりと意味があり、絡んだ糸が解きほぐされる開放感と登場人物たちが与えてくれる温かさが心地よい読後感を与えてくれた。

■映画版レビュー暗いところで待ち合わせ

                        1. +

暗いところで待ち合わせ
著者: 乙一
評価: ★★★★