雨の町

ある地方都市で内臓のない子供の死体が見つかる。ルポライターの荘太(和田聰宏)は、取材中に死んだはずの子供の死体が起き上がり姿を消すのを目撃。情報収集のため役場に行き、35年前に近隣の丙村で小学生の集団失踪事件が起きたことを知る。今回の事件との関連を調べる彼を役場で働く香坂(真木よう子)が助けてくれる。(Yahoo!ムービー

「吸血鬼ハンター“D”」や「トレジャーハンター」「魔界都市」などの菊池秀行の同名の短編小説を映画化した。ホラー映画と言うカテゴリー分けをされるようだが、ビジュアルや効果音で怖がらせるようなものではなく、ストーリーそのものに存在する不気味さが怖さを喚起させる。
そして怖さに負けずに観客に訴えかけてくる切なさが印象的。ひたすら怖がらせてくれればいいのに変にストーリーをつけて台無しになるパターンが多いが、この作品の場合はむしろ作品が訴えかけてくる主題に結果的に怖い要素が含まれるということと納得できる仕上がりだ。

 自分たちの気づかないうちにごく身近に「何か」が潜んでいるかもしれない、と言う恐怖は現代に生きる我々が日ごろ内面的に抱えている恐怖と同種のものといえるだろう。親が子を、子が親を信じられなくなってしまって起きる凄惨な事件。お互いのペルソナを「本物」として、それ以上互いに近づこうとしない浅薄な友人関係。そんな生活の中にふとわきあがる疑問を本作は観客の前に提示する。

 また、本作では近年あまり見られない親の愛情の示し方が描かれている。子のしたことに対して親が責任を取る。その当たり前にして実は厳しい覚悟のありようは、今を生きる我々もよく見ておく必要があるのではないだろうか。

 ラスト、人間の持つ疑念が生む悲劇が観客の胸を締めつける。

                        1. +

雨の町
監督: 田中誠
出演: 和田聰宏真木よう子成海璃子武重勉長島弘宜
評価: ★★★★