カミュなんて知らない

大学の授業で“不条理殺人”をテーマにした映画を撮ることになる。撮影開始を前に監督の直樹(柏原収史)は恋人のユカリ(吉川ひなの)につきまとわれ、助監督の喜代子(前田愛)は主役探しに奔走する。(Yahoo!ムービー

 作中に昔の名作へのわかりやすいオマージュがちりばめられたり、映画を作るいまどきの学生の姿が描かれていく。なんだか怪しい雰囲気を裏に感じつつも、「まあ、普通」位の感触で見ていた。既に監督の世界に絡めとられているのに気づかずに。

 不安定な女性と言うのはあるときは疎ましく感じる一方でなんともいえぬ引力を放つもので、手放しがたくなってしまうことが往々にしてある。しかし確実に消耗を強いられ、待っているのは悲しい結末が大半だ。無軌道な行動を自由と履き違えた若者の姿に多少辟易したころ、作品世界はいよいよその裏に脈々と流れていた本性を表し、我々は自分が今どこにいるのかを見失うような体験をする。

 ラストの衝撃はちょっとしたトラウマもの。なにも大声で主張しなくても、スゴイものはスゴイ、心に刻み付けられてしまうものはあるのだということを再認識させられた。

                        1. +

カミュなんて知らない
監督: 柳町光男
出演: 柏原収史吉川ひなの前田愛 、中泉英雄 、黒木メイサ
評価: ★★★★