この胸いっぱいの愛を

鈴谷(伊藤英明)は故郷の北九州・門司に帰るために飛行機に乗っていた。ところが到着してみると、20年前にタイムスリップしてしまい、10歳の自分とかつてあこがれていたた女性(ミムラ)に出会う。(Yahoo!ムービー)

梶尾真治の原作「クロノス・ジョウンターの伝説」を、『黄泉がえり』の塩田明彦が映画化。ということで、黄泉がえりっぽさはいっぱい漂っている。また、タイムスリップモノということで本当に今年は多いなぁと。

 ミムラがはじめて(?)、違った演技を見せているところが筆者としては新鮮だった。これまでは何を演じても同じ、という印象だったので、(ついこないだまでやっていた某ドラマも同じだなーという印象だった)それなりに頑張ったのかなと思う。

 ストーリーは主人公を初めとした数人が20年前にタイムスリップして思い残していたことをするというのがメイン。筆者は、人間誰しも過去に思いを残しているものだと思う。だからこの映画を見他人は皆、自らの人生を振り返るのではないだろうか。あのときに戻れたら自分はどうしただろうか、と。
 ただ、この映画のミソは自分が当時の自分になるのではなく、現在の姿、これまでの自分の人生をもったまま過去に戻るという点。そして、当時の自分と接し、影響を与えるという行為が許される点であろう。

 思いを残したそのときから、今までの自分の人生がたとえ辛いものであっても、それを否定してしまうのではなく、それらを踏まえ、そうした人生を送ってきたからこそ当時の自分に言える、為せる事があるのだということが大切にされている。
 現実には不可能だが、自らを否定すること無く、やり直すという行為が達成されるところに、この映画を見た観客の心を惹きつける力があるのだと思う。

 物語のオチのつけ方としては未来からの『黄泉がえり』と銘打って宣伝しているので、ここでわざわざ語らなくても判るだろう。

                        1. +

この胸いっぱいの愛を
監督: 塩田明彦
出演: 伊藤英明 、ミムラ勝地涼宮藤官九郎吉行和子
評価: ★★★