シンデレラマン

ボクサーとして華やかな戦歴を持つジム・ブラドック(ラッセル・クロウ)だったが、全盛期も過ぎ、ライセンスを剥奪されてしまう。そのため日雇いの仕事をしながら妻(レニー・ゼルウィガー)や子供たちと暮らしてしたがその生活は貧しく、食べ物を買うことさえもやっとだった。(Yahoo!ムービー)

実話を元にした映画だそうだが、筆者は恥ずかしながら本人のことは知らなかった。

 物語は大恐慌の時期が舞台で、華やかな生活が一転して貧しい暮らしとなってしまい、それでも妻と子を愛し、守ろうとする父親の姿が描かれる。妻を演じたレニー・ゼルウィガーが美人ではないので、貧乏な生活を見せられたときに違和感がなく(もちろん彼女の演技力あってのことだが)、子供たちもかわいらしくて、作品世界に入り込んで見ることができた。

 父親であるブラドックはかつて大活躍したボクサーだが貧しさの中、家族を守るため、子供との約束を守るために自身のプライドを捨てて金を得る。この行為は愛すべき、守るべき存在を持った人間の行為としてとても理解できるし、内面の葛藤も察することのできる場面であった。また、その延長でファイトマネーと自身の過去へのけじめとしてボクシングのリングに復帰したブラドックが己の中の誇りを呼び覚まされ、ボクサーとして復活していく様は男としてうれしく、素直に応援した。

 最強のチャンピオンとの対戦に心を痛める妻や、父のことが大好きで、自慢の子供たち。自身の誇りに加え家族への思いを胸に戦う父親の姿など、良い場面もたくさんあった。
 わかりやすい敵役だったチャンピオンが試合後にちゃんと挨拶をし、胸を張って退場していく姿にも好感。セコンドで親友のジョーを演じたポール・ジアマッティも良い味が出ていた。
 そんななか一番印象に残ったのはブラドックとジョーの妻二人が、家具の全てなくなったジョーの部屋でお茶を飲みながら話すシーン。こんな奥さんがいて二人とも幸せだ。

 史実を映画化しているという形なので、どこか『ベルンの奇蹟』に作りが似ている印象も受けたが、どちらも良い作品であることに間違いない。

                        1. +

シンデレラマン
監督: ロン・ハワード
出演: ラッセル・クロウレネー・ゼルウィガーポール・ジアマッティ 、クレイグ・ビアーコ 、ブルース・マッギル
評価: ★★★★