さまよう刃

蹂躙され殺された娘の復讐のため、父は犯人の一人を殺害し逃亡する。「遺族による復讐殺人」としてマスコミも大きく取り上げる。遺族に裁く権利はあるのか?(Amazon.co.jp

 昨今、目に触れることが増える一方の少年犯罪をテーマに描かれる本作は個人的には考えさせられる点が多かった。同じテーマを扱う作品も決して少なくはないのだが。読んだタイミングがぴたりと来てしまったのかもしれない。

 少し前に友人と「自分の子供が殺されたらどうするか?」という話題で話した。もともと筆者は死刑反対派で、人間に人間を裁く権利はない、という考え方をしていた。たとえば相手への復讐を為したとして、それはあくまで「殺された人のため」ではなく「自分のため」である。

 この部分を率直に認めてしまったとき、自分の家族を殺した相手に復讐したいという気持ちは判るし、たとえば相手を殺してしまったとして、責めることはできない気もする。

 では、その当事者を取り巻く人々は、どういったスタンスを取るべきなのだろうか?

 文学的な評価よりも、その題材そのものにかなり思うところがあり、最後の謎解き部分などは筆者自身はあまり、強い印象を持っていない。クライマックスのまとめ方は、「やはりそうしておくしかない?」といった感じで、明確な著者のスタンスを感じることはできなかった。きっと今も答えを探しているのではないかと思う。

                        1. +

さまよう刃
著者: 東野圭吾
評価: ★★★