愛されるために、ここにいる

執行官のジャン=クロード(パトリック・シェネ)は50歳を超え、心身ともに疲れきっていた。医師に運動を勧められた彼はある日思い切って事務所の向かいのタンゴ教室のドアを叩く。結婚式で踊るためにレッスンを受けていたフランソワーズ(アンヌ・コンシニ)は、ぎこちなくステップを踏む彼が古い知人だと気づき……。(Yahoo!映画

 愛すること、愛されることを知らずに人生を過ごしてきた中年男性が、ある日一人の女性と出会う。彼の人生が色づき始めていく・・・
 全編にタンゴのメロディがちりばめられ、描かれる物語は胸にしみる。

 借金の請求などを執行する仕事のため主人公ジャン=クロードは日々人に不快感をぶつけられ、施設住まいの父親に会いに行けば苛立つ父にあれこれと文句を言われる。別れた妻との間に設けた息子との仲もぎこちない。息子として、父として、生きることに疲れていたジャン=クロードは。医者から運動を進められていた彼は、向かいのビルから聞こえてくるタンゴのメロディに誘われるように教室の扉を開ける。

 彼の人生は、このちょっとした一歩によって大きく変わっていく。タンゴ教室で出会った女性フランソワーズは、かつて家族が世話をした子供の美しく成長した姿だった。

 心とは裏腹な態度をとってしまう父親はもちろん、みな心の中そのままに行動し、発言しているわけではないという真実を丁寧に描いてる。自分を振り返って誰もが理解できるであろう事も、相手の一言一言には傷つき、動揺してしまう。あの時素直になっていれば。あの時もっと相手のことを思いやっていれば。

 ジャン=クロードは愛されることを知らずに生きてきた、しかし父親が亡くなって初めて父に深く愛されていたことに気づくのだ。

 そしてジャン=クロードは自分自身の、愛する人の心を見つめなおす・・・

 本作は登場人物たちの微妙な表情を捉え、それが見事に感情を伝える効果的な役割を果たしている。パトリック・シェネの演技がすばらしい。

                        1. +

愛されるために、ここにいる
監督: 愛されるために、ここにいる
出演: パトリック・シェネアンヌ・コンシニ 、ジョルジュ・ウィルソン 、リオネル・アベランスキ 、シリル・クトン 、ジュヌヴィエーヴ・ムニシュ
評価: ★★★★