コワイ女


ある晩、加奈子(中越典子)は婚約者の晃(豊原功補)に車で送ってもらった帰り道で不思議な物音を耳にする。その直後、何かが落ちてきたような衝撃を受けたまま、どうにか部屋にたどり着くのだが、そこに晃から前妻に刺されたという電話が入る。そしてなぜか部屋の中には包丁を手にした異形の女(小林裕子)が立っており……。

日本の若手実力派監督3人が、女性の底知れぬ怖さに焦点を当てたオムニバスホラー。それぞれの物語に登場する“コワイ女”たちが、次々に登場人物たちの運命を狂わせていく。『ストロベリーショートケイクス』の中越典子や、『鍵がない』の目黒真希らが恐怖にさらされるヒロインを熱演。そのほかにも『初恋』の柄本佑や『ゆれる』の香川照之ら豪華キャストが勢ぞろいした。三者三様の語り口で描かれる日常に潜む恐怖に背筋も凍る。(Yahoo!映画

 三者三様の作品でなかなか楽しめた。

 一本目の「カタカタ」。冒頭の引用にあるのがこの作品で、真正面から怖さを出した作品。登場する女はモンスターともいえるもので、生理的に拒絶したい、と感じさせるコワイ女であった。敢えてある程度読めるどんでん返しを多重に仕込んでいるものの、あの女に追われまくる怖さは端から「来た!」と思わせてくれた。

 二本目「鋼」がなんとも怖くもおかしい。そして男なら思わず主人公の方を叩いて「判る判る」と言ってあげたくなるような展開だ。不条理で、思わず笑ってしまうような展開がありながらも、なんだか判らない、という怖さを堪能できる。舞台となる田舎の町もこんな奴がいても実は見過ごされているかも、と思わせるようないい雰囲気が出ていた。最後がちょっと普通になってしまった感があるが、一番挑戦的な作品だったと思う。

 三本目は「うけつぐもの」。日本の田舎のなんとも陰鬱とした雰囲気と、たまに行くだけではその気配しか感じることの出来ない内包した恐怖を描いたような作品。このような作品はきっと筆者の年代以上の世代がかろうじて知っている「怖さ」のような気がする。
 これが怖いということが頭でなく体感的に感じられる、こうした感覚を受け継ぐことは難しくなっているのかもしれない。

                        1. +

コワイ女
監督: 雨宮慶太 、鈴木卓爾 、豊島圭介
出演: 中越典子 、小林裕子 、豊原功補柄本佑菜葉菜香川照之 、目黒真希 、須賀健太松岡俊介左時枝
評価: ★★★