オトシモノ

高校生の奈々(沢尻エリカ)は、卒業後の進路で悩んでいた。彼女には仲間とつるんで楽しそうに日々を送っているクラスメイトの香苗(若槻千夏)がうらやましく見えた。そんなとき、心臓の病気で入院中の母親(浅田美代子)の見舞いに行かせた妹が失踪する。奈々は以前妹の同級生も行方不明になったことを思い出し……。 (シネマトゥデイ) (ヤフー映画)

本作は、日常に隣り合って存在する恐怖と、友情の話。と聞いていたのだが、ストーリーに肉付けされた部分があまりに適当なため、怖さや不気味さにも、感動にもどっちつかずといった印象が残った。

普通の電車で、ほかの車両には人がたくさん乗っているのに少年の乗った車両だけ客が一人・・・・とか、初めて訪ねていった妹の同級生に家に呼び鈴どころかノックもせずにいきなりドアを開けてあがりこむ、など観客が“物語世界”から“客席からの突っ込み”に引き戻されてしまう場面がそこかしこにちりばめられている。最たるものは多くの失踪者の中で主人公の妹だけがなぜか無傷で助け出される点。ほかの失踪者たちはみな化け物状態になっているのになぜ?ストーリー的にも、物語の鍵を握る女性が後半になって突然登場、これといった伏線も無く無理やり収束させられていく。ホラーというのは完全に不条理にするか、緻密な構成をするかというほうが面白いと思うのだが、このやり方はズルイと感じてしまった。名監督黒澤清の下で学んだ期待の監督だけに、次回作に期待。

さて、これ以上突っ込んでもどうしようもないので、俳優陣について。主演の沢尻エリカに関しては、『シュガー&スパイス 風味絶佳』のレビューでも言及しているのだが、実力以上の世間の評価に必死さがなくなっているのではないか?という気がする。パッチギ!で見せたような輝きがもうひとつ感じられなかった。現在の映画界を引っ張る一人であろう彼女にはいっそうの研鑽と飛躍を期待したい。

 今回鑑賞に行って最も「おお」と思ったのは映画が終わって劇場に流れたアナウンス。
「オトシモノ、オワスレモノニ、ゴチュウイクダサイ・・・」まったくだ。

                        1. +

オトシモノ
監督: 古澤健
出演: 沢尻エリカ 、若槻千夏 、小栗旬 、杉本彩 、板尾創路
評価: ★