ラフ ROUGH

実家の和菓子屋が昔からライバル同士のため、亜美(長澤まさみ)と圭介(速水もこみち)は犬猿の仲。同じ高校に入学して水泳部に入部した2人は、反発しあいながらも次第に引かれ合うようになる。そんな亜美には、競泳日本記録保持者の恋人・弘樹(阿部力)がいて、圭介と弘樹は水泳、恋のライバルとしてお互いを意識するようになる。(ヤフー映画

 あだち充の原作を映画化。『タッチ』に続き、長澤まさみがヒロインを務める。筆者の世代であだち充作品といえば『タッチ』や『みゆき』。本作の原作は未読だったので、鑑賞に先立ち数年ぶりに漫画喫茶に赴き原作を一気読みした。謎解きやどんでん返しが売りの作品の場合は原作を知らないほうが映画を楽しめるが、あだち充作品となれば作品そのものの空気感を味わうのが吉と読んだ。原作はあだち作品らしい繊細なつくりの青春ストーリーで、登場人物もそれなりにたくさんいるが丁寧に描きこまれた良作であった。

 映画のほうに話を戻す。映画の2時間の枠に原作をそのまま入れ込むのは言うまでもなく不可能。どのように「映画」として作品を成立させるのか、いくつか方法があるが、本作が出した答えは、「青春ストーリー」であり、「長澤まさみ」である。原作者あだち充に対する十分なリスペクトの元作られた映像、脚本、演出の作り出す雰囲気は好感の持てるさわやかな仕上がりであったと思う。

 亜美(長澤まさみ)と圭介(速水もこみち)の心が近づいていく過程にいささか性急な印象を受けたところもあるが、ストーリーの細かいところをあれこれ言うよりも生き生きと躍動する若者の姿を見て、自分の中にある「あの頃」を思い出すことができればそこには意義がある。

 もうひとつ、長澤まさみである。今回も彼女は長い手足を振って走っている。長澤まさみはその美しい容姿や、スクリーンから伝わってくる作品に対する姿勢が高い人気になっていると予想するが、この「動き」の魅力にも筆者は注目している。共演の速水もこみちの長身のおかげであまり目立ってはいないが、長澤まさみは168cmと長身で、手足も長い。このように体格に恵まれると得てして体の動きが控えめになるものだが、彼女の場合は存分に体を使った動きができる。これも血筋のなせる業か。

 エンドロールのあとにちょっとしたシーン在り。最後までしっかり鑑賞のこと。

                        1. +

ラフ ROUGH
監督: 大谷健太郎
出演: 長澤まさみ速水もこみち阿部力石田卓也高橋真唯
評価: ★★★