白夜行

1973年に起こった質屋殺しがプロローグ。最後に被害者と会った女がガス中毒死して、事件は迷宮入りする。物語の主人公は、質屋の息子と女の娘だ。当時小学生だった二人が成長し、社会で“活躍”するようになるまでを、世相とともに描ききる。2人の人生は順風満帆ではなく、次々忌まわしい事件が降りかかる……。(Amazon.co.jp
 ドラマ化されたのを機に再読した。

 主人公の二人亮司と雪穂は原作中ではまったく交流が描かれない。あくまで読者にそれを感じさせることで物語が進んでいく。これが非常に物語の雰囲気を盛り上げており、秀逸な演出方法であると感じる。二人のかかわり、やり取りはあくまで読者の想像の中にあり、二人のことを想像することで自分自身の内面にある闇の部分を見つめることにもつながっていくと思えるのだ。

 そして二人のキャラクターはドラマとは比べられないほどダークだ。そもそもが雪穂の最初の所業も意図的で、一緒に、ではなく「始末」という表現がふさわしい。その後の二人の人生を見ても生きるためと言うよりは自分の欲求のためといった要素が強く出ており、薄ら寒さを感じさせる一緒のホラーといえるくらいの闇の表現がされている。

 筆者はドラマのほうはアナザーストーリー的な感覚で見ている。これはこれで面白くもあり、ドラマを踏まえて原作を読んでみるのも別の作品のように感じられていいかもしれない。

                        1. +

白夜行
著者: 東野圭吾
評価: ★★★★