デカルトの密室

この時代、この題材、そして瀬名秀明だからこそ解き明かせた、人類が挑み続けた究極の謎。すなわち「人間とは何か?」。前作から五年、最新ミステリ巨編。(amazon

 難しい。とにかく難しい。哲学に興味のない人間には読了は困難では?と思わせる内容。著者は継続的にロボットを題材に選んで作品を書いているが、本作ではかなり「人格」を思わせるロボットが登場している。

 中国人の部屋やフレーム問題、不気味の谷など興味深いネタを随所に盛り込んだ内容は筆者には読み応えがあったが、ラストの部分で急に置いてきぼりにされた感がある。少し強引過ぎやしないだろうか。それまでフィクションなりのリアリティを持っていた世界観が吹っ飛んでしまっているような気がするのだ。

 ロボットに人格を求めるか?それを怖いと感じるか?世にあまたある作品で、さまざまな描かれ方をしているが、筆者にはまだ答えが出せない。

 本作のタイトルにもあるデカルト。まだ接したことがない、ちょっと敷居が高いと思っている人は、その前にこんな作品の存在を知っておいてもいいかもしれない。知っている人も多いだろうが、「からくりサーカス」という漫画がある。この作品は  

200年の永きに渡る愛憎と因縁。全ての悲劇は人形使いの兄弟・白銀と白金が、プラハの少女・フランシーヌに、同時に恋心を抱いてしまったことから始まった――
そして現在―――
 才賀勝(さいが まさる)は大きな運命の歯車に巻き込まれる。愛人の子である自分が、なぜか父親の莫大な遺産を受け継ぎ、命を狙われることになったのだ。
 勝は、謎のフランス人美少女「しろがね」ことエレオノール、拳法の達人・加藤鳴海(かとう なるみ)と出会い、自らの運命を切り開くために戦う。
 しかし200年の複雑な因縁は、3人の運命をいたずらに交錯させ、本人たちの望みとは別に、過酷な試練を与え続ける―――(http://websunday.net/rensai/karakuri.html
ということで少年漫画誌に連載中のものだが、作品の主要な設定にデカルトからの引用が確認できる。デカルトはフランシーヌと名づけた人形をトランクに入れて持ち歩いていたと言われ、これがそのまま設定に使われいる。そのほかの人物名などにも多くデカルトの著作や周辺に登場するものが使われており、この作品に触れておくとデカルトの難解な著作を読むための助けになることうけあいだ。(漫画自体はそれだけでもかなり面白いのでオススメ)

                        1. +

デカルトの密室
著者: 瀬名 秀明
評価: ★★