春の雪

侯爵家の子息、松枝清顕(妻夫木聡)と伯爵家の令嬢である綾倉聡子(竹内結子)は幼なじみの仲だったが、聡子はいつしか清顕に想いを寄せるようになっていた。しかし、不器用な清顕はその愛情表現に対してうまく応えることが出来なかった。(Yahoo!ムービー)
 三島由紀夫の「春の雪」を映画化。監督は『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲、主演が妻夫木聡竹内結子。撮影監督に『花様年華』『夏至』のリー・ピンビン。

 筆者は三島作品に全く思い入れが無いので、非常にフラットに鑑賞した。また、大正時代の人々の所作に関してもそれほど知識があるわけでもないので、違和感を感じることも無かったので、ストーリーを単純に追うという視点でレビューしたいと思う。

 清顕の子供じみた屈折した振る舞いや ひねくれた表情など、前半部分でたくさん見せられた清顕の人格が、後半一気に変わる(内面に隠していたものが表出してくる)。が、これがきっかけ、という境界線が、なんとなくぼやけているような印象を受けてしまった。まったくわからないというう訳ではなく、ぼやけている感じ。
 三島作品の主人公は屈折したタイプが多いが、じっくり自分自身と向き合ってみると、誰でもいくらかこうした部分がは持ち合わせており、かつそれを表に出さないようにしている気がする。そういった隠している部分を突かれることで我々は顔をそむけることができなくなってしまうのかもしれない。
 しかしそうした迫ってくるものが今ひとつスクリーンから伝わってこない。清顕は普通に嫌な奴として登場し、後半、ほとんど最後にきてやっと肯定的な視線で見ることができた。
 対して聡子は楚々としていながら積極的に清顕に対して自分の感情をぶつける。何ゆえ清顕なんか好きなのさと問いたくなるが、それが女というものか。

 全体的には学校指定の本を呼んでいる感じで、作品世界にぐっと入ることができずに、ストーリーを追っているだけになってしまった。うん、そういう話だったね。みたいな。

 映像に関しては絵画のようなキレイな場面が結構あり、楽しめた。

                        1. +

春の雪
監督: 行定勲
出演: 妻夫木聡竹内結子高岡蒼佑及川光博田口トモロヲ
評価: ★★★