私の頭の中の消しゴム

お嬢様育ちのスジン(ソン・イェジン)と、愛に懐疑的なチョルス(チョン・ウソン)は恋に落ち結婚する。2人はさまざまな困難を乗り越えて一層愛を深めていくが、幸せな日々はそう長くは続かなかった。(Yahoo!ムービー)
 日本のドラマ『Pure Soul ~君が僕を忘れても~』をベースに、ソン・イェジンチョン・ウソン主演で映画化。

 端から泣きに行くつもりで劇場に足を運んでいる人が多いと思うが、筆者も泣けた。公開2日目に行ったのだが、場所柄(渋谷)もあってか、いつものおば様ばかりという感じではなく、若い人も結構見に来ていた。

 物語は主人公スジンがアルツハイマー病にかかってしまい、幸せな結婚生活が徐々に病との闘いになっていくというもの。大きな要素として病気がすえられているが、テーマは愛である。ここで言う愛は単純に男女間の愛情というよりは、家族や周りの人に向けられた愛であり、いろいろな形でその描写が綴られていく。前半、スジンとチョルスが出会ってから結ばれるまでが、長いと感じる人もいるようだが、筆者は丁寧に描かれていると感じた。これがあって、後半の二人の気持ちにぐっと感情移入できたのではないかと思う。

 娘が不倫をしたり、工事現場の労働者(差別的ではあるが、娘を持つ親の目線なので、しょうがないだろう)と付き合ったりと、親としては心を痛めることばかりでも、温かく見守り、支える父親。チョルスの師匠や母親との関係がスジンとの生活を通して変化していくなどそれぞれが微妙な距離感を保ちながら愛情を送りあっている姿が感じられた。

 徐々に行動がおかしくなっていくスジンの姿に心を痛め、苦悩していたチョルスにとって、記憶が混濁して不倫相手と親しく話すスジンの姿は耐え難いものだったに違いない。このシーンでチョルスが不倫相手を殴りつけるシーンが残酷すぎるということで引いてしまった観客もいるようだが、ここは、こうした背景があってのしーんであり、また韓国という国の文化的背景の上で作られた映画(暴力に関してもそうだが、不倫に対する考え方など)であることを思うと筆者としては許容範囲であった。

 クライマックスのシーン、コンビニでの出会いの再現に反応を示さなかったスジンに落胆した直後ちょっとしたサプライズのような展開があるのだが、人々の視線にこめられた感情がスクリーンから感じられ、素直に泣けた。ラストのチョルスの一言や走っていく車をみて、これから来る過酷な運命が変わらなくても二人の気持ち、受け取り方しだいで希望がある、そんな風に感じられた。

                        1. +

私の頭の中の消しゴム
監督: イ・ジェハン
出演: チョン・ウソンソン・イェジン 、ペク・チョンハク
評価: ★★★★