百器徒然袋―雨

 京極堂シリーズのオールスターキャストが登場する痛快探偵(?)小説。登場人物は京極堂シリーズでおなじみの中善寺を初めとした面々だが、本作では榎木津に重点をおいた、その分はちゃめちゃな明るさのある作品になっている。

 物語は「探偵」であり「神」たる榎木津礼二郎が破天荒な活躍で事件を解決すると言うのが主軸だが、そこは京極夏彦面白い仕掛けをもって悪者を懲らしめる。主人公一味が「仕掛け」をもって事を始末するというスタイルは、「巷説百物語」に通じるものが在る。

 意外に動く京極堂、だんだん榎木津化していく益田など、京極堂シリーズの読者ならニヤリとさせられる場面がふんだんにあって面白かった。また、登場人物たちの会話からあちらのシリーズのどの事件とどの事件の間の時期にこの話が入るのだなあ、などと判るようになっており、より作品世界に引き込まれやすくなっている。
2003年に刊行された「陰摩羅鬼の瑕」の話題が1999年刊行の本書に既に登場しており、この時期に読んだのが逆に面白さが増した気がする。(本書は「塗仏の宴」刊行の1998年のあとに出ており、1話目は塗仏と陰摩羅鬼の間の話) 実際の制作期間は別にして、「推敲を重ねる」、「練る」時間ってクリエイトするときにとても大切なものですね。

                        1. +

百器徒然袋―雨
著者: 京極夏彦
評価: ★★★★