神は沈黙せず ブックレビュー

『UFOも、怪奇現象も、超能力も、すべて「神」からのメッセージだった!』(帯より引用)

 著者である山本弘氏は、「と学会」会長である。「と学会」というのは世の中のとんでもないものをウォッチングする団体だそうで、UFOや超能力そのた諸々、不思議なことや胡散臭いものにいろいろと解釈・解説を入れた本を出したりしているみなさんである。そんな山本氏がこうしたとんでもないものを題材に書き下ろしたのが本書である。

 Amazonなどのブックレビューでは賛否両論、ブログ系では賛辞が多いかなという本書であるが、私自身の感想も賛否入り乱れていると言うのが正直なところ。ただ、マイナスポイントの部分があまりに分量的に多くて賛の部分を駆逐してしまっているといった印象だ。

 この話、別の人が書いたらすごく面白くなるんじゃないかなぁ。「セカチュー」が原作本がダルダルなのに映画やドラマが結構良かったりしたように。

 物語のプロットは非常に面白いものだし、普段の活動で見せる「不思議なもの全否定」というスタンスはあえて抑えているようで、好感が持てる。「神は人間のことなんか見ていない」なんてかなり衝撃的でスゴイ切り口だと思った。しかし、物語の進行上重要な論拠であったり設定であったりといったところがあまりに杜撰で、そういった細かい破綻の多さが気になってしまって作品世界に入っていけない。文学作品として失敗してしまっていると言わざるを得ない。少なくとも私と言う一読者に対しては。これなら今まであまたあった「実は世界は作り物で・・・」系の作品のようにSF色を強くしてしまったほうが、逆に違和感が無かったかもしれない。

 登場人物のキャラクターも平板で複数出てきても作者が名札を付け替えながら何役もこなして必死に学芸会をしているような印象である。作中、主人公やそれに近い人々は一貫して自説を証明することに対して重きをおき、予断で物事を判断しないようにと言ったことを言うのだが、最後に来てオチの説明が「わかってしまった」である。なんだ?それ、である。それまで積み上げてきたものを全て無しにして、放り出して終わってしまう。これだけの紙幅を割いて、意味のない事例の列挙を我慢して読み(読み飛ばしもしたけど)最後がこれではそれこそ「とんでも本」ではないだろうか。

 それにしてもコンピュータ関係の知識が浅薄すぎる。
「口コミで人気の集まったサイトのアクセスが月20万」
「月間100万アクセスにも達するメジャーサイト」
この方、理系の、特にコンピュータ関係の知識無いんでしょうか(笑 あれだけいろいろと他者の批判をしていた下敷きの知識ってどの程度なんでしょう?20万なんてそこそこ人気のサイトの1日のアクセスですよ。某有名ポータルの一日のPVは数億いってるし、UUもかなりのもんですよ。調べたりしなかったんでしょうか。手持ちの資料を書き写す時間を少し調査に向ければよかったのに。

 最後にちょっとフォロー。
人間心理に関して解説されているところは結構イイところをついて取り上げられており、面白く読めた。(作中人物には反映されてないけど(笑。)

 最近、新作が発表されたので今読み始めたところです。(また買ってる自分は作者の思う壺なのか?)
今度こそ引用引用でページ数を稼いでいないことを祈る。

                        1. +

神は沈黙せず
著者: 山本弘
評価: ★★

『神は沈黙せず』批判