座頭市

 勝新太郎の代表作ともいえる時代劇を北野武が監督、ビートたけし主演で映画化。
本作はベネチア国際映画祭で監督賞を受賞した。

 金髪の座頭市。見る前は違和感があるかなと思っていたが、そんなことは無かった。そもそもが盲目のあんま師があれほど強いわけは無いわけで、座頭市の存在そのものがファンタジーである。この存在を認めた上で映画に入っているので違和感が感じられなかったのであろう。それから、このような見た目の違いをはじめとして、基本的なキャラクター設定以外は勝新座頭市とは一線を画した、違った作品として純粋に楽しめた。プログラムの中で小泉今日子さんも書かれているが、だらだらと殺陣を撮ることなく、勝負は一瞬だ。これが実にリズミカルで見ているほうにもテンポが出たような気がした。

 映画の中で流れる音楽や効果音、意識的にこれらがリズムを刻み、本作の中で大きな存在感を示している。そこここに散りばめられた時代劇のお約束とタップなどの斬新な試みが旨く融合しており、日本人にも外国人にもエンターテイメントとして実に心地よく受け入れさせてくれている。北野作品らしく、バイオレンス、ホモセクシュアルといった要素も入っているが、時代劇世代の比較的高い年齢層にも入りやすい作品として一つの方向性となったかもしれない。

 僕は渋谷でこの作品を見たのだけど、回りで見ている客層は老若男女まちまちで、しかも一様に満足げな印象。これって実はすごいことなんだと思う。もの作りの世界であらゆる世代を対象に満足の行くものを作るのって本当に大変です。ぜひ参考にしたい。


                        1. +

座頭市
監督: 北野武
出演: ビートたけし浅野忠信ガダルカナルタカ大楠道代夏川結衣柄本明
評価: ★★★★