陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)

白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」は、主の5度目の婚礼を控えていた。過去の花嫁は何者かの手によって悉く初夜に命を奪われているという。

花嫁を守るよう依頼された探偵・榎木津礼二郎は、小説家・関口巽と館を訪れる。ただ困惑する小説家をよそに、館の住人達の前で探偵は叫んだ。――おお、そこに人殺しがいる。(Amazon.co.jpレビューより引用) 


 京極堂シリーズの第7弾(「塗仏の宴」を1作とカウント)の本作、京極堂、関口、榎木津らも勿論登場。特に関口の活躍が目立つ。榎木津はもう一つ活躍不足か。それでも彼の一言一言には呆れるやら羨ましいやら、そしてはっとさせられるやら。今までの作品と比べ判りやすいのか、読者であるところの自分が京極ワールドに馴染んでいるのか、かなり最初の方で話のキーポイントが判ってしまった。
 しかし、だからといってこの作品の魅力については疑う余地はなく、生と死に関してじっくりと考えさせられる作品となっている。

登場人物の中で、いかにも身近にいそうだと思ったのは、伯爵の叔父。過去の栄光、肩書きにしがみつきつつ自分では何も関係がない、といった事を言う。実際には権威に媚び諂い、それ以外のものに対しては異常なまでのプライドで見下してかかる。そこには信頼関係といったものは存在しない。学歴だけのバカ上司にいそうだ。

対して、相変わらず愚痴愚痴と煮え切らない関口であるが本作では自分の好ましい者を守るため奮闘する。なんだかジーンとしてしまった。

                        1. +

陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)
著者: 京極夏彦
評価: ★★★★