姑獲鳥(うぶめ)の夏

  • 2003.11.2-

 京極堂こと中善寺秋彦を主人公とした京極夏彦の人気シリーズ第一弾。京極堂の友人にして作家の関口巽の視点から不可思議な事件の顛末を描いたミステリーである。
 古書店京極堂を営む中善寺秋彦のもうひとつの顔は陰陽師であり、彼は言葉(呪)によって憑き物を落とす。

 戦前から続くある病院で起こった不可思議な事件をたまたま知った関口がその解決に乗り出すことになる。 その病院の娘は、なんと20ヶ月も妊娠したままだというのである・・・。

 筆者は京極堂シリーズの中で本作を4番目に読んだのだが、 鬱病を患い、いつも自信なさ気な関口が実は・・・というのは割と衝撃的であった。
 また、京極堂シリーズのヒットに乗っかるように京極夏彦に向けられた盗作疑惑(津田 庄一 (著)「京極堂の偽」)の主な論拠もこの作品の中、 特に作品中の登場人物である探偵の榎木津礼二郎の持つ能力(榎木津の能力とは「人の記憶が見える」というもの)についての説明が問題だったりするらしい。

 筆者としては、京極氏の主張も聞いてみたいが、この部分が盗作であっても、氏の作品に対する評価は特に変わらない。筆者は「京極堂の偽」を未読なので、この件に関しては改めてレビューを書きたいと思うが、普通の盗作というのではなく、理論をパクられたと主張しているそうだ。
・・・理論ってみんなに支持されて使われて初めて認められたことになると思うんだけどなぁ? 宗教や哲学をはじめとした豊富な知見が溢れているのが、京極堂シリーズの魅力であったりするわけで、そのうちのひとつが最近の人の「考え方」であっても別にいいじゃないかと思うのだ。盗作を主張している本人が「理論」といっている時点で「?」である。「創作」であるといっているなら「盗作で儲けやがって」というのはわかるけど。

――この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君。

  • 2004.8.28-

 先日映画化の発表がありましたね。京極作品は映像化が難しそうなものが多いのですが、どのような作品になるのか楽しみです。
 映画は映画としてフラットに楽しみたい。

                        1. +

姑獲鳥(うぶめ)の夏
著者: 京極夏彦
評価: ★★★