蒼い瞳とニュアージュ

『催眠』嵯峨敏也、『千里眼』岬美由紀に続き、第三のカウンセラー一ノ瀬恵梨香の活躍を描く。
 これまでの松岡氏の作品同様、本作品も実際に起きた時事ニュースをモチーフに物語が紡がれていく。偶然だが、つい最近(03年9月)首都圏の地震予知が話題になっており、作品中のエピソードに合致している。

 本作では、最近の千里眼シリーズよりは初期の松岡圭祐作品に立ち戻った感じで、登場人物の心理描写、人の心についてといった部分に比重が置かれており、一読者として嬉しかった。私は催眠や千里眼でも作中に挿入された朝比奈のサイドストーリーにも魅力を感じて読んでいるので、こうした人と人の心のふれあいを感じさせるエピソードが丁寧に描かれているのを見ると、穏やかな気持ちになった。本作ではカウンセラーである主人公自身が心に傷を持っており、主人公が自分自身とどのように向き合っていくのかというところも見所である。

 宇崎はエピローグにて恵梨香のニュアージュとなる。恵梨香、宇崎それぞれが成長し、ひとつの壁を越えてこれからどうなるのか、続編が楽しみである。

 著者である松岡圭祐氏は、『千里眼』を著したとき女優の水野美紀さんを意識して書いたと発言しているが(映画版『千里眼』にて主演)、本作の一ノ瀬恵梨香はさしずめモーニング娘。矢口真里さんだろうか。(笑)

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蒼い瞳とニュアージュ
著者: 松岡圭祐
評価: ★★★★