パッション

「ブレイブハート」で有名なメル・ギブソンが何十億円というポケットマネーで制作した作品。
この作品は、キリスト最後の12時間を忠実に衝撃的に描いている。

 外国ではこれを見たお年寄が亡くなったそうですが、それもわかる気がしました。筆者にしては珍しく友人と連れ立っての鑑賞でしたが、劇場を出るときはみんな重苦しい雰囲気でした。
 それほどこの作品で描かれた描写は凄惨で衝撃的です。しかもこれが史実であるというのがすごい。史実との照らし合わせは良くわかりませんが、聖書の記述に対して細部までよく研究されていることは確かです。4福音書の中に登場するエピソードを織り交ぜて進められるストーリーを見ていると、人間の弱さを実感すると同時にキリストの言葉の重みというものがずっしりと感じられました。聖書を読んでいても文字だけでは感じられなかった拷問の「痛み」が映像を通して突き刺さってきて、痛かった。

 キリストの弟子たちは、キリストと行動をともにしていたころは我々と同じダメな奴らです。でもキリストの受難後、突き動かされるように布教活動を行い、キリストと同じように磔になってなくなった人もいて、まさに聖人として生まれ変わっていくわけですね。目の前で自ら師と仰ぐ存在が拷問を受け、思わず知らないと言ってしまうペトロの当時の心情、そして以後襲われる自己嫌悪の気持ちは身につまされます。

 映画の内容が徹底して聖書に従っており、それ以前のストーリーなど一切説明が無いのでキリスト教の知識のない人にはわかりにくいかもしれませんが、(そのため公開劇場数も少な目らしい)そういう前提知識が無かったとしても何かを感じられるのではないかと思います。

 「罪人を罰する」という名目で暴力をふるう人々の狂気を、この映画を見て気づいて欲しいですね。これは実際の暴力に限らず、様様な形で私たちの周りで行われていることですから。

 暴力表現に目を奪われすぎずにキリストの為したことを見つめることでこの映画の評価が変わってくるかもしれませんね。

 大祭司たちの顔が妙に似ていてそこだけおかしかった。

                        1. +

パッション
監督:メル・ギブソン
出演:ジム・カヴィーゼルモニカ・ベルッチ、マヤ・モルゲンステルン
評価: ★★★★