タッチ

双子の兄弟、上杉達也(斉藤祥太)と和也(斉藤慶太)。和也は野球部のエースとして活躍し甲子園を目指していたが……。(ヤフー映画

 いわずと知れたあだち充原作のコミックの大人気作の映画化。漫画というよりはテレビアニメとしてのほうが認知が高いか。

 ストーリーはもう誰でも知っているといっても大げさではないくらい有名であるが、主要人物の一人が事故死するという展開は当時かなりの衝撃をもって受け止められた。本作ではこうした軸となる展開はそのままなぞりつつも、「さわやかな青春映画」といった部分を中心にすえ、その空気を楽しむ映画となっている。長い原作であり、誰もがその中身を知っているという時点で、この映画に対して話の流れについて論じてもあまり意味を感じないので、あくまで作中の空気や演者について述べたい。

 南役を演じた長澤まさみをいかに魅力的にフィルムに切り取るかといったところに腐心する監督のこだわりといったものも感じられる。『メゾン・ド・ヒミコ』の犬童一心監督の作る雰囲気、筆者は好きだ。クライマックスで南が球場にむけて走るシーンなどは、まさに長澤まさみの走る姿を撮りたいがために付け足されたシーンなのだそうだ。ちょうど現実でも甲子園大会が行われているこの時期の鑑賞は気分的にも入りやすいかもしれない。

 一方達也と和也を演じた斉藤祥太、斉藤慶太。双子であるというところで、この役を獲得したのだろうが、いかにも力不足といった感は否めない。長澤まさみが、長澤まさみなりの「南」を演じているのに大して、彼らには彼らなりの説得力、というか息遣いのようなものが感じられなかったのは残念。これからの成長を期待したい。

                        1. +

タッチ
監督: 犬童一心
出演: 長澤まさみ斉藤祥太 、斉藤慶太 、RIKIYA 、平塚真介
評価: ★★★