ロング・エンゲージメント

解説: 『アメリ』のオドレイ・トトゥジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作。フランス版「はいからさんが通る」のような本作で、オドレイ演じるマチルダが探す恋人・マネクを演じるのは、若手人気俳優のギャスパー・ウリエル。物語の鍵を握る人物の一人として登場し、フランス語をなんなく操るオスカー女優、ジョディ・フォスターにも注目。

ストーリー: 軍法会議で死刑を宣告された5人の兵士は、敵との中間地帯に放り出される。その兵士の1人にマチルダ(オドレイ・トトゥ)が愛する恋人・マネク(ギャスパー・ウリエル)が含まれていた。5人の兵士は死んだとされているが、マチルダはマネクの消息を追う。(Yahoo!ムービー)

 ストーリーは大きく分けて2つの時間軸の中で進んでいく。ひとつは戦争に行って死んだとされる恋人の行方を追い求めるマチルドの時間。もうひとつは戦争の只中に放り込まれ、自我を崩壊させてしまうマネクとその周囲の人々が直面する悲惨な時間である。ジュネ監督は戦争の悲惨さ、残酷さを容赦なく描く。自らの体を傷つけることで戦争からの逃避を図る5人に対して観客は共感、同情を覚えると思う。戦争の場面に漂うのは重い厭戦感であり、疲れきった人間の様(さま)だ。

 絶望的とも思える境遇に置かれた恋人の話を聞いてもなお、「マネクに何かあればわかるはず」と恋人の生存を信じるマチルドの悪戦苦闘に知らず心の中で声援を送っていた。多少のズル(本当は、足を引きずるものの歩けるに、車椅子に乗って協力を依頼に行ったりする)をしても許せるキャラクターが彼女にはある。
 恋人のことを思って突き進むマチルドの周りには彼女を思いやる愛情が満ちている。いつも彼女を心配している伯父夫婦、弁護士や探偵もなんだかんだと彼女に協力的である。映像も暖かな光の物が多く、「アメリ」の世界観をほうふつとさせる。徐々に明かされるマネクの真実も、悲惨な戦争描写の中にあって小さな「愛」がちりばめられ、皆に少しずつ助けられながら生き永らえるマネクの様子がわかってくる。

 ミステリ部分に関しては、登場人物がけっこう多く、フランス人の名前で、戦中戦後で服装や髪型が変わったり、髭があったり無かったり・・・とかなり苦労させられた。

 ラストシーン。マチルドは自分に投げかけられた嘘や計算の全く無い一言に改めて自分の愛情を確認したのではないだろうか。

 劇中登場するシーンで一番すきなのは男3人がはしゃぎながらバイクで遊ぶシーン。それを見る伯母さんの視線。なんとも心が暖かくなった。

                        1. +

ロング・エンゲージメント
監督: ジャン=ピエール・ジュネ
出演: オドレイ・トトゥギャスパー・ウリエル 、ジャン=ピエール・ベッケル 、ドミニク・ベテンフェルド 、クロヴィス・コルニヤック
評価: ★★★