きみにしか聞こえない

 乙一の『Calling You』を映画化。孤独を抱えた主人公の物語の良作が多い乙一のショートストーリーをさらに深みのある暖かな作品に仕上げている。本作に関しては原作より上と評価したい。もちろん、すばらしい原作があってこそであることも明記する。

内気で友だちのいない高校生のリョウ(成海璃子)は、ある日、公園でおもちゃの携帯電話を拾う。数日後、彼女が保健室にいると着信音が聞こえ、若い男性の声が聞こえてくる。なぜか、二人は電話がなくてもテレパシーで通話できるようになり、長野に住むシンヤ(小出恵介)と、横浜で暮らすリョウの不思議な交流が始まる。(Yahoo!映画

 主演は『あしたの私のつくり方』『雨の町』 などの成海璃子。そして『初恋』『キサラギ』の小出恵介

 筆者は乙一の原作を未読で鑑賞、その後原作を読んだ。大きく違うのは小出恵介演じるシンヤの設定だが、これが実に良い変化をもたらしており、より温かく、感動的なストーリーになっている。
 周囲とのコミュニケーションに苦労している二人をひとつの奇跡が結びつける。それぞれに悩みを抱えてはいるが、シンヤのほうがその環境に長くいて、リョウ(成海璃子)を暖かく見守る視点が映画にはある。そしてもうひとつ大きな要素は「修理する」ということ。修理するという行為はそれがどのようなもので、何が悪いのかがわからなければ出来ないこと。二人の心の扉は閉じているのだが、そこにいきなり飛び込んできた相手を受け入れることが出来たのは傷を負ったものしか判らない痛みを相手が知っていると直感できたからだろう。互いを思いやる気持ち、支える心が二人の心の扉を開いていく。

 ラスト、ひとつの謎が明かされる。本作を見た若者が未来の自分を思い描き、勇気付けられ、すばらしい毎日が送れることを願う。

                        1. +

きみにしか聞こえない
監督: 荻島達也
出演: 成海璃子小出恵介片瀬那奈 、石川伸一郎 、高田延彦 、羽田実加
評価: ★★★★