あしたの私のつくり方

 真戸香の小説を市川準監督が映像化。主演は成海璃子前田敦子。小説を読んでいた印象とは配役が逆だが、俳優としての力量を考えると妥当か。
学校では仲間外れを恐れて目立たず、家では両親を気遣い良い子を演じる寿梨(成海璃子)は、周りに合わせてしまう自分に違和感を感じていた。小・中学校で同級生だった日南子(前田敦子)は、優等生からクラスで無視される存在に転落。ある出来事を思い出した寿梨は、疎遠になっていた日南子に架空の物語を携帯メールで送り始める。

 周囲とうまくやるために自分を殺し、仮面を被って生きることになれてしまった少女が、友人との奇妙なつながりを持つうちに本当の自分を見つめることを思い出していく。

 学生時代の葛藤や、社会に出てからでも似たような感覚、体験をすることがある社会の中の自分の居場所、在りかたへの迷い。筆者の歳になってしまえば、彼女たちを見守る視線で作品を見るのだと思うが、若い世代は多少なりとも共感する人が多いのだろうと思う。

 クライマックスの二人のやり取りが小説では対面するのだが映画ではテレビ電話。docomoがスポンサー故の演出であることがあからさまで、作品の価値を若干損なってしまった感があるのが残念。ただ、それを意識から排除すればこれはこれで悪くないカナとも思える。コラボCMの大量投下が「作品」としてはマイナスに働いた格好。

 筆者は相鉄線沿線出身なので、小説に忠実に相鉄線を使っていたのが小さくうれしかった。住宅街のロケ地がどこかわからないのだが、空気感が横浜っぽくて感心。

                        1. +

あしたの私のつくり方
監督: 市川準
出演: 成海璃子前田敦子 、高岡蒼甫 、近藤芳正奥貫薫田口トモロヲ 、石原真理子 、石原良純
評価: ★★★