ドラゴンヘッド

ある日、東京へ向かう新幹線が、静岡のトンネル内で原因不明の事故を起こした。車両は大破し、乗客は即死。だが、この惨事の中で、修学旅行帰りの高校生、青木テルと、同級生の瀬戸アコ、高橋ノブオの3人だけが奇跡的に生き残り、彼らは救助を待つことに。しかし、誰も彼らを助けに現われず、トンネル内はますます闇に覆われていき、ノブオは恐怖のため次第に精神に異常を来たしていく。そんな混乱の中、テルとアコは暗闇の恐怖を逃れるため地上に脱出するが、なんと2人の眼前に映ったのは白い灰が降る荒廃した大地だった…。(Yahoo!映画

 漫画原作でウズベキスタンロケをしたことが話題に。

 あちこちのレビューを観るとあまり評判が良くないのだが、筆者は難点もあるもののそこまで酷くはなかったという印象。

 当事者として未曾有の災害にあったとき、その全貌を理解している人がどれだけいるだろうか?錯綜するデマや噂の中からどれだけ真実を読み取ることが出来るか?
 俯瞰的な視点で見たときにいったい何が起きているのかがはっきりしないまま周りの状況だけはお構いなしに展開していくという描き方はこのような作品の中ではアリだと思う。壮大な世界観を無理に2時間に詰め込むようなことをするとかなりの確立で失敗するからだ。作中のキャラクターなのか、作品のベースとなる空気感なのか、監督がチョイスするエッセンスを集中して描くことによって一般的な観客に見せられる『作品』に落とし込んでいくしかないのだと思う。原作ファンが物足りなさを感じるのも致し方なしではあろうが、原作未読の筆者は楽しめた。原作を忠実になぞることが映画化の一義の意味ではないことを理解したい。本作では、むしろ原作ファンのために入れたであろうノブオ(山田孝之)の隈取りなどが余計なシーンに思える。

 『ドラゴンヘッド』のなかで描かれているのは、人間は自らの意志とは関係なく起きるさまざまな苦難にであい、思うに任せない状況にしばしば陥るということ。そしてそれでも人は生きていくのだということだろう。クライマックス近く、やっとのことでたどり着いた東京でテルが見た光景は、感情を失う食べ物を口にし、目の前の辛さから逃避した人々の生きながら屍と化した「ゾンビ」のような人間の群。
 本作から、いや原作でも構わないのだが、失敗したときの悔しさや恥ずかしさを避けるために物事に真剣に取り組むことをバカにしたり、自らのよ弱さから目をそらすために他者を貶めることに逃げ出す行為が、自分自身を殺していることに気づくことができるかもしれない。

                        1. +

ドラゴンヘッド
監督: 飯田譲治
出演: 妻夫木聡SAYAKA山田孝之藤木直人近藤芳正根津甚八寺田農 、谷津勲 、大川翔太 、吉岡祥仁 、松重豊奥貫薫嶋田久作街田しおん 、角田幸恵 、宮嶋剛史 、原田佳奈 、藤井かほり
評価: ★★★