夜のピクニック

高校生活最後の伝統行事「歩行祭」を迎える甲田貴子(多部未華子)は、一度も話したことのないクラスメイト西脇融(石田卓也)に話しかけようと考えていた。2人は異母兄妹の間柄で、そのことは誰にもいえない秘密だった。一方、融も貴子を意識しながらも近づくことができず、事情を知らない友人たちが勘違いして、告白するようけしかける。(Yahoo!映画

 最後まで見ること。この映画を鑑賞する上で大事なポイントだ。
正直なところ、始まってしばらくは、「えー、こんな演出なの?ヤバイ?」と思わせられるところもいくつかあった。前半はかなり心配したのだが、後半に向けてぐっと良くなってくる。見終わって席を立つときには自分が彼らの頃のことを思い出したりしながら、なんとなく軽い足取りで劇場をあとにできた。

 いくつか回想シーンや妄想シーンをはさむものの、基本的にはひたすら歩く姿がスクリーン上に展開される。しかしそこにはいくつものドラマがあり、見ていて飽きることもない。なにより若者たちのさまざまな表情が実に色とりどりで、楽しかった。

 歩行祭の裏方であるちょっと情けない少年とそれを見守る少女など、特にストーリーに深くかかわってこないけれど、主人公たち以外にも歩行祭のなかにドラマがあることが感じられてほほえましい。

 『ルート225』の多部未華子は、まだまだ幼い印象も強いが役者としての魅力は増しているように思う。彼女にしかない眼力が、本作でも光っていた。親友役の西原亜希は最近一気に露出が増えてきた注目株。SuicaのCMで見覚えのある人も多いことだろうが。『シムソンズ』の加藤ローサ、 『スイングガールズ』の貫地谷しほりなど青春もので活躍している若手女優も多数出ているが、石田卓也郭智博など男性陣も芸達者がそろっており、若手俳優の博覧会状態。

 本作を撮影するに当たって、出演者、監督、スタッフが60kmのミニ歩行祭を行ったそうだ。疲労感を体感するとともに、互いの絆を深めるのに大きな役割を果たしたであろう事は想像に難くない。

 筆者の通っていた学校でも約30kmを歩く「歩く大会」なるものが毎年行われていたが、「ただ歩くだけなのに何か特別」感というのは非常に共感を持って思い出せる。こういうことをするもの今だけ、と思ったり、普段は話さないようなことが口を付いて出たり・・・まさに青春といった要素がぎゅっと詰め込まれていると思うのだ。

 作中、彼らは80km歩いた後も意外と元気そうだし良く話しているが、それは全てわかった上での演出だろう。この映画の本筋はそこにはないのだから。歩行祭自体ではなく、そこにいる彼らのココロにこそ目を向けている。


                        1. +

夜のピクニック
監督: 長澤雅彦
出演: 多部未華子石田卓也郭智博西原亜希貫地谷しほり松田まどか柄本佑高部あい加藤ローサ池松壮亮近野成美嶋田久作田山涼成南果歩
評価: ★★★