容疑者 室井慎次

2005年2月某日、警視庁・室井管理官(柳葉敏郎)が、自らが指揮をとった殺人事件の捜査の責任をとらされ、逮捕されてしまう。警察庁と警視庁の確執が絡み、新城(筧利夫)や沖田(真矢みき)の尽力も虚しく、事態は最悪の状況になり……。(Yahoo!ムービー

踊る大捜査線』スピンオフ企画第2弾。

  『踊る大捜査線』の根底となっている世界観がよく現れている作品である一方、脚本の君塚良一 氏が監督をすることで本広克行監督作品の持つ雰囲気は無い。これによって評価がかなり分かれているようだ。筆者は肯定派。
 表情だけで心情を演じる柳葉敏郎の演技を堪能。田中麗奈はとにかく走る。陸上部出身の設定にあわせて特訓したらしいが、なかなかに格好いい走り。きっと運動神経のいい人なのだろう。シリアスな物語の中で唯一笑えるシーンがスリーアミーゴスの登場シーン。ここは劇場中が笑っていた。
そして、物語後半の自分たちで捜査本部を作るシーン。コミカルでありつつ感動させる場面。ここが一番良かったかもしれない。

 室井がこれだけの目にあっているのに青島が動かないことに対して、製作の亀山千広氏はインタビューの中で疑問に答えている。「青島は現場で頑張ることを信条としているから、自分の所轄内で頑張っていると解釈、スリーアミーゴスの台詞、『なにやってんだ、我らの室井さんが』にその思いを託した。室井も青島を呼ぼうとは思わないし自分で解決しようとする男だ」と。
これはもちろん映画に青島(織田裕司)が登場しないことに対してどのようにつじつまを合わせるかということからでてきた考え(設定)ではあるだろうが、筆者は納得したい。

 真相が実にくだらないところから始まり、回りが全て大騒ぎになってしまう点や、そうした事件に真剣に立ち向かわねばならないやり切れなさと、それでもこれからも信念を貫こうという意志が室井からは伝わったし、久美子(田中)が得られた心の傷の癒し、『踊る』テイストが十分出ていた。

 『交渉人 真下正義』のラストで謎になっていた犯人について何かわかるか期待していたのだが、作中で新聞の見出しにでてくる以外の絡みはなく、謎のままであった。この点は残念。

 あと、新宿のオープンセットに金がかかりすぎたのか、空港や車などの合成シーンがしょぼくて不自然だったのが減点。

                        1. +

容疑者 室井慎次
監督: 君塚良一
出演: 柳葉敏郎 、田中麗奈哀川翔八嶋智人吹越満
評価: ★★★