メゾン・ド・ヒミコ

ゲイである父親(田中泯)を嫌い、その存在を否定して生きてきた沙織(柴崎コウ)は、春彦(オダギリジョー)という若い男から父がガンで余命いくばくもないことを知らされる。春彦は父が営むゲイのための老人ホームで働く、父親の恋人だった。 (Yahoo!ムービー)

ジョゼと虎と魚たち』の犬童一心監督と脚本家・渡辺あやのコンビの作品で、本作もフィルムから醸し出される「映画」の香りが楽しめた。オダギリジョー柴咲コウというスター性たっぷりの二人も期待通りの演技を見せるが、なんと言っても田中泯の美しいこと。なんだか、オダギリ君が恋人というのもそれほど違和感がないかも、などと思わせる存在感があった。

 物語は幼い頃の辛い思い出からゲイを嫌悪していた沙織が徐々に人と人とのかかわりを通して住人たちと理解しあう姿や、自分は知らなかった父母の関係性、そして父と自分自身の関係を見つめなおしていく姿を静かにフィルムに焼き付けている。ほかにも、中学生の内に芽生えた感情とそれに対応できない自分の葛藤やそこから一歩踏み出す姿など細かい部分にも繊細な気遣いが感じられて好感が持てた。
 口が汚いが、暖かいゲイたちに囲まれるうちに、自分のまわり全てを敵愾心と諦念をまとって見てきた沙織の視線が変化していく姿に、筆者自身の視線がやわらかくなるのが感じられて、見てよかったと思った。

 卑弥呼の台詞「でも、あなたが好きよ」にはぐっと来た。自分も、自分が大切だと思える人にああ言える生き方をしたい。

                        1. +

メゾン・ド・ヒミコ
監督: 犬童一心
出演: オダギリジョー柴咲コウ田中泯西島秀俊 、歌澤寅右衛門
評価: ★★★★